- 著者
-
猿田 雅之
- 出版者
- 一般財団法人 日本消化器病学会
- 雑誌
- 日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
- 巻号頁・発行日
- vol.118, no.3, pp.193-202, 2021-03-10 (Released:2021-03-10)
- 参考文献数
- 55
潰瘍性大腸炎とクローン病に代表される炎症性腸疾患(IBD)は増加の一途を辿り,いまだ完治させることはできないが,有効な治療薬の開発は進んでいる.近年のIBD治療の大きな転機は抗TNF-α抗体の登場で,高い寛解率と維持率から治療史を変える薬剤となった.以降,サイトカインを標的とした抗体療法の開発が続いているが,一方で抗薬物抗体の出現による二次無効の問題も懸念されている.現在,慢性炎症の制御を目的としたリンパ球の遊走や侵入を抑える薬剤や,炎症性サイトカインの結合後に誘導される細胞内シグナルを標的とした薬剤も登場している.本稿では,新規に展開するIBD治療薬の現状を示し,治療の将来展望についても概説する.