著者
長澤 祐季 中川 量晴 吉見 佳那子 玉井 斗萌 吉澤 彰 山口 浩平 原 豪志 中根 綾子 戸原 玄
雑誌
一般社団法人日本老年歯科医学会 第31回学術大会
巻号頁・発行日
2020-09-30

【目的】加齢や嚥下障害により,医薬品の服用や食事にとろみ調整食品(以下とろみ剤)を用いることは少なくない。先行研究により,とろみ剤が薬効を減弱させる可能性や,キサンタンガムを含有する濃厚流動食品が,含有しないものと比較して血糖値の上昇を抑制する可能性が報告されている。しかしながら,とろみ剤が栄養の吸収にどのような影響を及ぼすかについては,不明な点が多い。そこで今回,ラットの発育と飼料形態の関連性を検証するために,基礎的研究を実施した。【方法】4週齢雄性SDラットを4〜5匹ずつ4群に分け,液体飼料(C社製),0.5,1,1.5%とろみ調整飼料(液体飼料にとろみ剤・N社製を添加)を用いて,3週間飼育した(A群:液体飼料,B群:0.5%とろみ飼料,C群:1%とろみ飼料,D群:1.5%とろみ飼料)。餌は100kcal/日に揃えすべて経口摂取させ,水は自由摂取とした。液体飼料ととろみ調整飼料の摂取開始翌日をx日として体重を経時的に測定し,体重増加割合(%)を用いて飼育期間中の発育状況の変化を評価した。実験終了時に解剖し肝,腎,精巣上体脂肪重量の測定と血液生化学的検査を行い,体重増加割合(%)とともに各群間で相違があるか統計学的に検討した。【結果と考察】x+7,x+14,x+21日目における体重増加率はA群と比較してD群で低値な傾向を示した。また腎臓重量はA群と比較してD群で有意に低値となり,肝臓,精巣上体脂肪重量は各群間で相異を認めなかった。血液生化学検査では,TG(mg/dL)がA群と比較してC,D群で有意に低値を示した。本研究結果より,液体飼料と比較してとろみ剤を添加した飼料は体重増加および腎臓重量の増加を制限する可能性があり,脂質代謝の状態を反映している血中TG濃度を有意に低下させることが明らかとなった。これはショ糖食投与ラットに対するグアガム-キサンタンガム混合物の血中脂質低下効果の報告と同様の結果である。とろみ剤が含有するキサンタンガムは高粘性の難消化性多糖類であり,腸管上粘質性糖タンパク質と混ざり合い被拡散水層の厚さを増すことが吸収阻害の要因の一つと考えられる。また今回与えた液体飼料は25kcalが脂質であり脂質の吸収抑制により総カロリー数が減少し体重増加率の減少が起こったと示唆される。(COI開示:なし)(東京医科歯科大学動物実験委員会承認 A2019-270A)