- 著者
-
玉井 昌宏
- 出版者
- 大阪大学
- 雑誌
- 奨励研究(A)
- 巻号頁・発行日
- 1997
本研究では,植生の幹の直径程度あるいは植生背後に生じる後流が認識できる程度の長さを最小のスケールとして,植生の運動,植生を起源とする乱れと水流の持つより大きなスケールの乱れとの相互干渉を明らかにすることを目的として,木理実験と数値計算を実施した.植生の縮尺を河道のそれと同一にすると,植生と流体間に生じる流体力に関する抵抗則が実物と模型との間で変化することになる.そこで,縮尺の異なる歪み模型により実験を行なうことにした.実験結果そのものに一般性がないことを補うために,植生と流体運動の間の相互作用をモデル化し,それを基礎とする数値計算を実施して,モデル化の妥当性を評価するための基礎データとして利用することとした.乱流計算における植生と乱流の相互作用のモデル化については,前年度において検討した固体粒子運動と流体運動の相互作用について開発した乱流モデルを発展させた.植生と乱流場との相互作用を表示する最も単純な流れ場として,河床に植生を有する等流場に関する鉛直一次元の数値解析を実行した.この数値計算においては,直径や高さといった植生固体の特性と植生密度による流動構造の変化,特に,植生と河床との流体抵抗力の分担,植生部と無植生部との流量分担等について検討した.実務上は,植生部の視覚的な特性によって,植生部と無植生部の基本的な流量分担が決定されている.これでは河道の疎通能力を過小に見積もったり,逆に過大に見積もる可能性があり,治水計画の精度上問題がある.今回の研究で,植生帯特性と流量分担との関係を明確にしたことによって,実務設計面においても有益な情報を提供するものと考えられる.