著者
天川 葵 川原崎 淑子 玉巻 十紀子
出版者
園田学園女子大学
雑誌
園田学園女子大学論文集 (ISSN:02862816)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.1-10, 1977-12-20

焼肉の前処理として, 鶏肉を清酒, 味淋に浸漬した場合の調理効果を総合的に検索するため, 重量, 乾物量, 粗脂肪, グリコーゲン(多糖類)たんぱく及びフォリン陽性成分の測定を行い, 可消化性ならびに光顕レベルでの形態変化を調べた。(1) 乾物量は, 対照, 清酒, 味淋浸漬の順延多く, 焼肉重量の減少とほゞ逆比例の関係を示した。(2) 粗脂肪量は対照, 味淋, 清酒浸漬の順に加熱による減少量が大きかった。(3) グリコーゲン(多糖類)量は, 清酒浸漬群では変化なく, 味淋浸漬で20時間に約7倍に増加し, 味淋中からのいちじるしい浸透を示唆した。(4) 水に不溶性の蛋白は大きな変化を示さなかったが, 水溶性両分中蛋白, ペプチドを除くフォリン陽性成分は清酒, 味淋浸漬で増加し, 特に時間経過と共に味淋浸清でいちじるしい結果を得た。(5)可消化性は, 清酒20時間ならびに味淋1時間, 20時間の浸漬で増加した。(6) 清酒浸清により, 細胞間隙が狭く, 細胞質の密度が高くなり, 筋線維内部に加熱によって生じた細かい切断が見られた。味淋浸清20時間では, 細胞サイズが生肉に近く回復し, 弾性の低下によって加熱の結果生じた線維の切断が見られた。