著者
玉木 一郎 畑中 竜輝
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.124, 2013

フモトミズナラは東海地方と関東地方の一部に生育するコナラ属の希少樹種である。本研究では,自生地が多く存在する岐阜県の14集団417個体を対象に,それらの遺伝的多様性の程度や遺伝的分化の程度を明らかにすることを目的とした。自生地を網羅する14地域から,集団あたり約30個体の葉サンプルを採取した。DNAを抽出し,EST-SSR7座の遺伝子型を決定した。各集団における<i>H</i><sub>E</sub>と対立遺伝子数は,それぞれ平均(SD)0.745(0.012)と8.8(0.5)の値を示し,集団間のばらつきは小さかった。<i>G</i><sub>ST</sub>とHedrickの<i>G'</i><sub>ST</sub>は,それぞれ0.009と0.049の値を示し,遺伝的分化は6/7座で有意であった。しかし,<i>D</i><sub>A</sub>遺伝距離に基づくNJ樹からは明瞭な地理的傾向は認められず,地理的距離とDA遺伝距離の相関も有意ではなかった(r = 0.062; P = 0.659)。STRUCTURE解析においても,単一の任意交配集団が支持されたことから,岐阜県のフモトミズナラの遺伝的分化の程度は弱いことが示唆された。今後は同じ地点から採取した近縁種かつ普遍種のコナラと遺伝的変異の程度を比較する予定である。<br>