著者
村上 淳基 赤羽 学 中西 康裕 今井 信也 玉本 哲郎 今村 知明
出版者
一般社団法人 日本医療情報学会
雑誌
医療情報学 (ISSN:02898055)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.73-84, 2019-10-15 (Released:2020-10-23)
参考文献数
23

日本で放射線治療に使用される装置は,直線加速器(リニアック)が最も多く,今後のがん治療には不可欠である.しかし,高額医療機器であるリニアックの収益性に関する研究はまだ不十分である.本研究では,2014年度にリニアックを導入している一施設あたりの年間収支差を病院規模別,地域別に試算した.さらに,年間収支差の要因について分析した.放射線治療に特化した小規模や大規模な病院では,一施設当たりの年間収支はプラスとなる一方,中規模病院では収支が均衡,あるいはマイナスとなることが示された.また地域別では,一部の都道府県で収支がマイナスとなった.これらの差は,治療患者数および機器の購入費用に起因すると考えられる.今後,放射線治療を受ける患者数はさらに増加することが予想されるため,放射線治療が病院経営に与える影響は大きい.リニアック導入に関しては直接的な収支に加え,化学療法など併用治療による収支に間接的に与える影響や各医療施設での臨床的必要性を総合的に考慮する必要がある.