著者
今井 信也 小川 俊夫 赤羽 学 今村 知明
出版者
一般社団法人 日本医療情報学会
雑誌
医療情報学 (ISSN:02898055)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.141-149, 2014 (Released:2016-04-20)
参考文献数
12

磁気共鳴画像装置(MRI)は今日の画像診断において欠かすことのできない検査機器であるが,その採算性についてはMRIの性能や利用頻度,また周辺地域の導入状況に影響されると考えられる.そこで本稿では平成23年度に一般病院で稼働しているMRIの一台あたり年間収支差を年間費用と収入より試算し,MRI導入の採算性を性能別,病床規模別,都道府県別に分析を行った.MRIの年間収支差は,1.5テスラ以上では病床規模別,都道府県別においてばらつきはあるものの,ほぼすべて黒字であったが,1.5テスラ未満ではほぼすべて赤字であった.MRI導入による採算性の要因としては,病床規模での各種加算の取得割合の違いや,地域でのMRI一台あたりの人口および医師数が大きく関係していた.病院経営の視点から,高性能なMRIは病床規模や地域性に関わらず導入を検討できうる医療機器であると考えるが,採算面だけでなく臨床的な必要性や間接的な収支を考慮するべきである.
著者
村上 淳基 赤羽 学 中西 康裕 今井 信也 玉本 哲郎 今村 知明
出版者
一般社団法人 日本医療情報学会
雑誌
医療情報学 (ISSN:02898055)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.73-84, 2019-10-15 (Released:2020-10-23)
参考文献数
23

日本で放射線治療に使用される装置は,直線加速器(リニアック)が最も多く,今後のがん治療には不可欠である.しかし,高額医療機器であるリニアックの収益性に関する研究はまだ不十分である.本研究では,2014年度にリニアックを導入している一施設あたりの年間収支差を病院規模別,地域別に試算した.さらに,年間収支差の要因について分析した.放射線治療に特化した小規模や大規模な病院では,一施設当たりの年間収支はプラスとなる一方,中規模病院では収支が均衡,あるいはマイナスとなることが示された.また地域別では,一部の都道府県で収支がマイナスとなった.これらの差は,治療患者数および機器の購入費用に起因すると考えられる.今後,放射線治療を受ける患者数はさらに増加することが予想されるため,放射線治療が病院経営に与える影響は大きい.リニアック導入に関しては直接的な収支に加え,化学療法など併用治療による収支に間接的に与える影響や各医療施設での臨床的必要性を総合的に考慮する必要がある.
著者
山口 さち子 井澤 修平 前谷津 文雄 圡井 司 引地 健生 藤田 秀樹 今井 信也 赤羽 学 王 瑞生
出版者
日本磁気共鳴医学会
雑誌
日本磁気共鳴医学会雑誌 (ISSN:09149457)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.103-119, 2018 (Released:2018-12-10)
参考文献数
27

In this study, we surveyed policies on allocating MRI scan duties to pregnant employees, and investigated the respondents' level of awareness of non-ionizing radiation. We sent 5763 questionnaires to facilities equipped with MRI devices in Japan (the corresponding respondent was a member of the personnel responsible for MRI scan duties). The questionnaire comprised: 1) Basic information; 2) General questions about the employees' pregnancies (e.g., whether the hospital has a particular policy); 3) The policy on MRI scan duties while pregnant and alternative duties ; and 4) Level of awareness of non-ionizing radiation in general. The results revealed inconsistent handling within Japan. Answers stating that ``increase the opportunity of allocation to MRI scan duties compared with the current situation'' accounted for 7.6%, ``maintaining the current frequency of allocation to MRI scan duties'' for 32.3%, and ``reduce the opportunity of allocation to MRI scan duties compared with current situation'' for 52.6%. Around half of facilities prepared work options (e.g. access restriction into MRI scan room or assign extra staff to MRI scan duties) in MRI scan duties during pregnancy. In an attitude survey for non-ionizing radiation emitted by medical devices, respondents showed higher attention compared with that for the radiation emitted by home electronic devices. This report describes a summary of the survey. Further analysis is in progress and will be reported soon.
著者
佐野 友美 赤羽 学 八巻 心太郎 菅野 健太郎 今村 知明
出版者
一般社団法人 日本医療情報学会
雑誌
医療情報学 (ISSN:02898055)
巻号頁・発行日
vol.28, no.6, pp.293-300, 2008 (Released:2015-03-20)
参考文献数
19

【目的】国際疾病分類(ICD)は,現在ICD–10が広く世界で活用されている.しかし,医学の進歩や社会変化に伴い改訂の必要性が高まってきたため,WHOはICD–11への改訂に着手した.わが国は内科領域の議長国となり,改訂に強く関与することとなった.そこで本論文では,改訂へ向けた進展状況を報告するとともに,今後の課題に対して考察を加える.【現状】WHOは既に改訂に向け,内科や精神等の12個の領域で専門部会(TAG)を設立した.わが国も積極的に改訂にかかわるべく,国内内科TAG検討会を立ち上げ,各専門学会や行政等が連携し,問題点の抽出や課題の整理,改善案の提示,国際会議参加およびWHO動向の把握等を行っている.【考察】現在までに,多くの問題点が指摘されている.問題点の代表的なものとして,言語の問題,インフォメーションモデルの改良や「分類」として利用されているICDにどのようにして「オントロジー」の概念を組み込んでいくか等が挙げられる.【まとめ】今後,国内に加え世界的な意見集約・調整を行う作業は想像以上に困難であろう.現在はICD–10+を作成する作業段階であり,オントロジーまで含めた国際的合意が得られるようにするには多くの困難があると考えられる.
著者
赤羽 学 今村 知明 高野 裕久 上田 佳代 清水 厚
出版者
奈良県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

我々がこれまでに確立したインターネットを介した健康調査システムを用いて、アレルギー症状を日々収集し、黄砂飛来量・花粉飛散量との関係をみた。各症状の有無を従属変数とし、対象者の性別、年齢と各調査日の最高気温、湿度、黄砂量を共変数として一般化推定方程式を用いて分析した。アレルギー症状の有症状率は2月上旬から増加傾向を示し、黄砂の大量飛来日を起点として増加していた。黄砂量と関連が強かった症状は、鼻水、咳、目のかゆみであった。本研究では、黄砂によってアレルギー症状が誘発されている可能性が示唆されただけでなく、花粉症患者においては花粉飛散量と不眠にも関連があることが判明した。
著者
神奈川 芳行 赤羽 学 今村 知明 長谷川 専 山口 健太郎 鬼武 一夫 髙谷 幸 山本 茂貴
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.100-109, 2014 (Released:2014-04-16)
参考文献数
16

目的 世界的に人為的な食品汚染についての関心が高まるに伴い,G8 では専門家会合が開催されたり,米国では多くの対策•方針案等が策定されている。しかし,日本では,食品企業の食品テロに対する認識が低く,その脆弱性が危惧されている。今回我々は,日本の食品企業に食品防御対策を普及させるためのガイドライン等を作成した。方法 すでに作成されている食品工場用チェックリストに示されている食品防御対策について,費用対効果を考慮した「推奨度」を整理した。その推奨度(費用対効果の高い対策順)を基に,「食品防御対策ガイドライン(案)」を作成し,食品工場に対して聞き取り調査を実施した。また,食品防御の観点から,食品工場用チェックリストやガイドラインと「総合衛生管理製造過程承認制度実施要領(日本版 HACCP)」を比較した。結果 推奨度を基に試作したガイドライン(案)に対する食品工場への聞き取り調査を踏まえて,「食品防御対策ガイドライン(食品製造工場向け)」とその解説を作成した。また,食品企業に普及させるために,HACCP における食品防御の観点からの留意事項を作成した。結論 食品防御対策を普及させるためには,食品事業者が使用しやすいガイドラインが有用と考えられた。