著者
玉田 一晃
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.17-20, 2005

Clutch and egg size in the Japanese amphidromous goby, <I>Rhinogobius</I> sp.DA (<I>R. brunneus</I>, dark type), inhabiting small rivers in the southern part of the Kii peninsula were examined. Clutch sizes, ranging between 1043 and 4436, increased with increasing maternal standard length. Spawned egg volume ranged between 0.85 mm<SUP>3</SUP> and 1.38 mm<SUP>3</SUP>, mean egg volumes being similar among the eight rivers sampled during the study. <I>Rhinogobius</I> sp.DA had a relatively larger egg and smaller clutch size compared to those of three other amphidromous <I>Rhinogobius</I> species inhabiting relatively larger rivers in the same region. Inter-specihic egg size variations among the four species appear to result in differing larval survival rates during their migration to the sea.
著者
玉田 一晃
出版者
和歌山県立田辺中学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2010

ハゼ科ヨシノボリ属魚類の繁殖様式は基質産卵性で雄が卵の見張り保護を行う。ヨシノボリ属魚類にとって川床の礫石は産卵基質となる重要な繁殖資源である。さらに,礫石サイズは保育できる卵数を決定するので,雄の繁殖成功上重要な形質である。ヨシノボリ属魚類では,大型の巣石獲得をめぐる雄間競争が種内・種間レベルでみられ,大型の個体が優位に立つ。河川性カワヨシノボリは同所的に生息する両側回遊性ヨシノボリ類に比べて小型で,巣石獲得競争上不利であると考えられる。一方,カワヨシノボリは両側回遊性ヨシノボリ類に比べ極めて大卵少産なので,前者の巣石サイズが後者より小さくても問題は少ない可能性がある。仮に,カワヨシノボリが必要な巣石サイズが両側回遊性ヨシノボリ類より小さいなら,かれらが共存する場合,巣石獲得をめぐる種間競争は緩和されることが予測される。本研究ではこの予測を検証するため,まず,カワヨシノボリと両側回遊性ヨシノボリ類の共存地点において,各種がどのようなサイズの巣石を利用しているのか調査した。次に,カワヨシノボリについて巣石サイズ選択実験をおこない、同一河川に生息する,既に巣石サイズの選好性が明らかになっている両側回遊性ヨシノボリ類とその選択性を比較した。野外調査の結果、カワヨシノボリは両側回遊性ヨシノボリ類より小さな礫石を巣として利用し、その産着卵面積も小さかった。巣石サイズ選択実験の結果、雄体サイズが巣石サイズ選択性を決定する要因であり,種の違いは無関係であることが明らかになった。カワヨシノボリは共存する両側回遊性ヨシノボリ類より体サイズが小さいので、結果として小さな礫石を巣として利用していることになる。以上の結果より,河川性カワヨシノボリと両側回遊性ヨシノボリ類とは巣石獲得をめぐっては激しい競争関係にないことが示唆された。