- 著者
-
玉田 吉行
- 出版者
- 宮崎大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2003
研究の目的は、英語で書かれたアフリカ文学がどのようにアフリカのエイズ問題を描いているかを探ることで、ケニアの2つの小説Nice PeopleとThe Last Plagueを軸に、疫病に映し出された人間のさがを考察しました。政治や経済の局面ではとらえられない人間のさがを知らなければ、アフリカのエイズに対抗出来ません。アフリカの文学作品は、政治や経済の局面ではとらえられない人問のさがを見事に描き出しています。報告書は、以下の5章にまとめました。1章アフリカとエイズ2章アフリカの歴史3章『ナイス・ピープル』と『最後の疫病』4章南アフリカとエイズ治療薬5章哀しき人間の性(さが)1章では、HIVの特徴を軸に、アフリカのエイズの状況を描きました。2章では、現在のエイズの惨状を生み出したアフリカの歴史を概観しています。3章では、アフリカのエイズの現状を描き出しているケニアの小説『ナイス・ピープル』と『最後の疫病』を取り上げ、ケニアの歴史と作家グギを軸に、二つの作品を分析しました。4章では、南アフリカの歴史を辿りながら、エイズ治療薬を巡る南アフリカの状況を考察しています。5章では、辿ってきた哀しき人間のさがについてまとめました。疎外された状況下での自己意識をテーマにリチャード・ライトの作品の研究を始めました。作品理解のために、アメリカの歴史を辿る過程で、アフリカに辿り着きました。以来、ラ・グーマの文学だけでなく、アフリカ全般、医療についても考えるようになりました。授業でも、アメリカやアフリカの歴史・文学・医療などを取り上げてきました。そうした「アフロ・アメリカ→アフリカ→エイズ」の流れと(1)文学と医学,(2)教育と研究、(3)教養と専門の狭間から、「エイズを主題とするアフリカ文学が描く人間のさが」を考えました。