- 著者
-
玉田 真紀
- 出版者
- 尚絅学院大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2006
研究目的は、繊維リサイクルの社会的なシステムを構築するための基礎研究データを得て問題点を明確にすることにある。繊維製品が大量生産、大量消費されるようになった現代、家庭で処分できないまま保管する衣服に困る事態が起きている。こうした繊維製品を資源回収するルートが各都道府県にどの程度存在するか、また、生活者にわかりやすく利用しやすい内容かを、各自治体から各家庭に配布される『ごみと資源の分別パンフレット』から分析し考察した。郵送とホームページより収集できたパンフレットの回収総数は1609(回収率89.0%)であった。9割以上回収できた県が55.3%、回収率が7割未満と低かった県は沖縄と秋田のみだった。平成7〜9年に東北地方のみを調査した時と比べると、パンフレットは手引きや事典などの形式が全般的に増え、詳細な品目を列挙するものが多く見られた。しかし記載品目は市町村で異なり、なぜその繊維製品を可燃、資源、粗大扱いにしているのかの基準がわかり難い。また、分別が細かすぎて実行し難いのではないかと思えるものが多かった。繊維製品が記載されている箇所を列挙して集計した結果、全国都道府県の平均値は、可燃扱いが92.4%、資源扱いが62.3%、粗大扱いが72.8%、不燃扱いが18.7%となった。資源扱いについて地域別に見ると、北海道45.8%、東北38.0%、関東77.4%、信越、北陸39.6%、東海80.0%、近畿77.7%、中国63.2%、四国55.4%、九州72.4%、沖縄45.5%となり、地域により格差があった。資源回収をする自治体の割合が7割を超えた地域は、上位から順に東海、近畿、関東、九州となり、歴史的に見て故繊維業者や再生利用する産業が近隣にある地域という特性が考えられる。回収物を利用する需要先の出口が確保できるため、行政の回収ルートも明示されていると思われた。