- 著者
-
玉田 耕治
- 出版者
- 山口大学医学会
- 雑誌
- 山口医学 (ISSN:05131731)
- 巻号頁・発行日
- vol.61, no.1+2, pp.5-10, 2012-05-01 (Released:2013-03-04)
- 参考文献数
- 18
- 被引用文献数
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癌免疫療法は従来の治療法に抵抗性である進行癌に対する革新的な治療法として研究,開発が進められている.近年の基礎的な腫瘍免疫学の発展と多くの臨床研究の蓄積により,癌と免疫システムの相互作用に関する分子機構が明らかとなってきた.免疫システムは癌細胞が発生する段階では免疫監視機構として,また顕在化した癌組織においては腫瘍抗原に対する免疫応答として癌をコントロールしようとする.これらの免疫反応に対し,癌細胞は自身の免疫原性を変化させることや腫瘍微小環境における免疫抑制メカニズムを誘導することで,極めて巧妙に免疫システムから逃避し,生存増殖していることが明らかとなってきた.このことから従来の癌免疫療法の手法では効率的に癌反応性免疫細胞を誘導することは困難であり,またたとえ誘導できたとしても,腫瘍微小環境における抑制メカニズムでその機能が阻害され,十分な治療効果が示せないことが示唆された.つまり効果的な癌免疫療法の樹立には,いかに効率的に癌反応性免疫細胞を誘導するかという点に加えて,腫瘍微小環境での免疫逃避機構や免疫抑制メカニズムをいかに制御するか,という視点が重要であることが確立してきた.このようなパラダイムシフトに基づき次世代型の癌免疫療法が次々と開発されており,米国ではその一部が進行癌に対する新しい治療法としてすでに承認されている.本総説では,このような視点から開発が進められている「免疫チェックポイント分子の阻害を標的とした新しい抗体療法」および「遺伝子改変技術を利用したリンパ球移入療法」について紹介する.