著者
生田 陽二 伊藤 麻美 森 貴幸 鈴木 洋実 小出 彩香 冨田 直 清水 直樹 三山 佐保子
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.283-284, 2017 (Released:2017-07-12)
参考文献数
9

6歳女児. 発熱・頭痛で発症 (第1病日), 第7病日に傾眠傾向とけいれんが出現し入院. 頭部MRI拡散強調画像では大脳皮質に広範囲の拡散制限を, 脳波では高振幅徐波と全般性あるいは多焦点性の棘徐波複合を認めた. 入院時より下肢間代発作や全身強直発作が群発し, 人工呼吸管理とした. 発作は治療抵抗性で, 第9病日にthiopental (TP) 持続投与を開始したところ, 臨床発作は消失した. TP開始後, 心機能悪化が懸念されたため他の抗てんかん薬を併用してTPの減量を試みた. しかし部分発作が再発し, 脳波も数十秒間連続する多棘波が5~10分間隔で出現する非臨床発作と考えられる所見となり, TP離脱は困難であった. 第24病日に24時間の絶食期間を経てケトン指数3 : 1でケトン食療法を開始したところ, 絶食開始24時間後には背景脳波活動の改善がみられ, ケトン食開始後は速やかに発作と脳波上の棘波が減少した. 第35病日以降, 発作は消失し第42病日にTPを終了した. 以上の経過より, 本症例はTPからの離脱にケトン食療法が有効であった難治頻回部分発作重積型急性脳炎 (AERRPS) と診断した. AERRPSでは抗てんかん薬の大量かつ長期間の経静脈投与を必要とし, 心機能を含めた臓器障害が問題となる. 抗てんかん薬経静脈投与からの離脱困難例においてケトン食療法は選択肢の一つであり, 輸液中の糖質制限が発作抑制に有効である可能性が示唆された.
著者
冨田 直 生田 陽二 三山 佐保子 雨宮 馨
出版者
日本重症心身障害学会
雑誌
日本重症心身障害学会誌 (ISSN:13431439)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.242, 2016

はじめにオピオイドは非癌患者の呼吸困難に対しても効果があるとされる。今回、呼吸苦緩和および呼吸負荷軽減の治療の両方の目的でモルヒネを使用し、治療困難な肺炎から回復した症例を経験したので報告する。症例症例は8歳男児。原病は脳性麻痺・慢性肺疾患。在胎23週出生体重572gの超低出生体重児と脳室内出血による後遺症で大島分類1の重症心身障害児となった。1歳1カ月で新生児病棟退院後、呼吸不全を伴う下気道炎を繰り返し5歳時に単純気管切開を施行されている。その後、主治医と家族で急変時の対応について話し合い、人工呼吸器装着はしない方針となった。今回RSV感染による最重度の呼吸不全を伴う肺炎を発症し入院。事前の決定事項を家族に再度確認の上、方針に従いステロイド投与、RTXレスピレーター、肺理学療法、持続吸入等最大限の治療を行った。しかし、低酸素血症の進行を認め、治療継続による回復は困難と判断。入院4日目にICUに入室し、集中治療科の協力を得て治療と緩和両方の目的でモルヒネ持続点滴(0.4mg/kg/day)を開始した。病状はその後も進行し開始3日目にはSaO2のベースが40-60%台となり尿量も低下したが、それ以上の悪化はない状態が3日間持続。その後、ゆっくりと呼吸状態が改善、開始8日目にはモルヒネ減量開始でき、9日目に中止。入院71日で退院した。考察呼吸困難に対するオピオイドの効果は苦痛緩和以外に呼吸数低下による呼吸仕事量低下、肺血管抵抗低下による心負荷軽減などがある。RSV肺炎に対しては特異的な治療がなく、対症療法を行い回復を待つことになる。今回の症例ではモルヒネが直接最重度の肺炎を治療したわけではないが、呼吸困難による負担を軽減することで回復を助ける役割をしたと考えている。結語急性の呼吸困難時、オピオイドの使用は呼吸苦をとるだけでなく回復を支える治療的な効果を得られる可能性がある