著者
生田目 紀子 江川 潔 須藤 章 石川 丹
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.373-379, 2019 (Released:2020-01-17)
参考文献数
20

【目的】Down症候群患者の発達と患者背景, リハビリテーション, 合併症との関連性を検討することを目的とした. 【方法】1997年1月から2016年12月に初診し当院で療育を行ったDown症候群患者の患者背景, 当院のリハビリテーション, 合併症の有無と, 粗大運動および有意語の獲得時期, IQ/DQについて診療録を元に後方視的に調査し, 関連性について検討した. 【結果】成人期初診例, モザイク症例を除いたDown症候群患者58症例を対象とした. 調査時年齢は9.8±4.8歳, 初診時月齢は22.3±15.5か月であった. 合併症は54例 (93%) で確認でき, 心疾患37例, 眼疾患17例, 甲状腺疾患11例, 難聴9例, 血液疾患5例, 消化器疾患3例, てんかん2例であった. 難聴, てんかん合併群は粗大運動発達, 有意語獲得時期ともに遅い傾向にあり, IQ/DQもより低値であった. 患者背景とその他の合併症は概ね発達に影響を及ぼさなかった. 生後12か月以前に理学療法を開始した群の独歩獲得までの理学療法期間は, 生後24か月以降に開始した群に比し有意に短かった. 【結論】てんかん合併群は発達遅滞がより顕著となる傾向にあり, 治療, 療育の早期介入が重要である. 難聴合併群も同様の傾向が疑われるが他の合併症の影響も否定できず, 今後詳細な検討が必要となる. Down症候群における理学療法早期開始は早期の独歩獲得に有用である.