著者
榎木 亮介 江川 潔
出版者
大学共同利用機関法人自然科学研究機構(新分野創成センター、アストロバイオロジーセンター、生命創成探究
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

私たち哺乳類の概日リズムの中枢は、脳深部にある小さな神経核(視交叉上核)に局在し、他の脳領域や全身にリズム情報を発振して、睡眠覚醒サイクルやホルモン分泌などの約24時間の生理機能を制御している。視交叉上核は約2万個のGABA作動性の神経細胞により構成されるが、「なぜ概日リズム中枢はGABA作動性神経細胞から構成されるのか?」という根源的な問いに対して私達は明確な回答を持ち合わせていない。本研究では、これまで申請者が開発してきた長期/多機能の光イメージング計測を用い、GABA作動性神経細胞が「いつ・どこで・どのように」働くのかを明らかし、概日リズム中枢の神経回路の作動原理を理解することを目指す。
著者
生田目 紀子 江川 潔 須藤 章 石川 丹
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.373-379, 2019 (Released:2020-01-17)
参考文献数
20

【目的】Down症候群患者の発達と患者背景, リハビリテーション, 合併症との関連性を検討することを目的とした. 【方法】1997年1月から2016年12月に初診し当院で療育を行ったDown症候群患者の患者背景, 当院のリハビリテーション, 合併症の有無と, 粗大運動および有意語の獲得時期, IQ/DQについて診療録を元に後方視的に調査し, 関連性について検討した. 【結果】成人期初診例, モザイク症例を除いたDown症候群患者58症例を対象とした. 調査時年齢は9.8±4.8歳, 初診時月齢は22.3±15.5か月であった. 合併症は54例 (93%) で確認でき, 心疾患37例, 眼疾患17例, 甲状腺疾患11例, 難聴9例, 血液疾患5例, 消化器疾患3例, てんかん2例であった. 難聴, てんかん合併群は粗大運動発達, 有意語獲得時期ともに遅い傾向にあり, IQ/DQもより低値であった. 患者背景とその他の合併症は概ね発達に影響を及ぼさなかった. 生後12か月以前に理学療法を開始した群の独歩獲得までの理学療法期間は, 生後24か月以降に開始した群に比し有意に短かった. 【結論】てんかん合併群は発達遅滞がより顕著となる傾向にあり, 治療, 療育の早期介入が重要である. 難聴合併群も同様の傾向が疑われるが他の合併症の影響も否定できず, 今後詳細な検討が必要となる. Down症候群における理学療法早期開始は早期の独歩獲得に有用である.