著者
生駒 俊和 浅井 孝夫 遠藤 和男 土屋 康雄
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.760-765, 2018-10-25 (Released:2018-10-27)
参考文献数
22

インド北部のガンジス川流域は胆嚢がん多発地域である。しかし,その発症機序は十分に解明されていない。本研究の目的は,ガンジス川流域の住民が日常的に飲食に使用している水の汚染状況を調査し,胆嚢がん発症要因解明の手掛かりを得ることである。2017年9月,インド北部のバナラシ市に滞在中に,市内のガンジス河の河川水,公共水道水(1カ所),公共井戸水(2カ所),及びバナラシ市内及び近郊の胆嚢がん患者宅の井戸水(4カ所)を採取した。簡易水質検査法により10項目(鉛,細菌,農薬,鉄,銅,硝酸塩,亜硝酸塩,塩素,pH,硬度)の水質検査を行い,各々の結果を我が国における水道水質基準と比較した。水道水質基準を超えていた項目は,細菌,鉄,硝酸性窒素であった。細菌は,患者宅の井戸水3カ所で,鉄は,水道水,公共井戸水2カ所,患者宅井戸水2カ所で基準値以上を示した。硝酸性窒素は,市内井戸水1カ所で基準値より高値を示した。鉛,農薬,銅,亜硝酸性窒素,塩素,pH,硬度の値は全て基準範囲内であった。今回の調査で,患者宅の井戸水は細菌汚染(75%,3/4)と鉄の濃度が高い(50%,2/4)ことが判明した。細菌感染が胆嚢がん発症と関係していることが報告されていることから,患者宅井戸水を汚染している細菌種についての詳細な検討が必要である。