著者
田中 佑弥
雑誌
臨床教育学論集 = Journal of clinical education research (ISSN:18823874)
巻号頁・発行日
no.8, pp.23-39, 2016-12-25

日本における「フリースクール」概念は、曖昧であり、しばしば濫用されてきた。本稿では、日本で「フリースクール」が知られる契機になった大沼安史の著作、フリースクール研究会、東京シューレ、「フリースクール」に関する先行研究などを検討することにより、日本において「フリースクール」概念が普及する過程とその問題点を検討し、「フリースクール」概念の整理を試みた。
著者
田中 佑弥 Yuya Tanaka
雑誌
臨床教育学研究 = Clinical Education (ISSN:13412434)
巻号頁・発行日
no.23, pp.13-22, 2017-03

近年、フリースクールの制度化を目指す動きが活発化し、2016 年には「教育機会確保法」が成立したが、フリースクールの制度化をめぐってはさまざまな意見がある。本稿では、フリースクールの制度化に先行してフリースクールに言及した政府の有識者会議の報告書や、制度化に反対する障害者運動の主張を検討し、論争において何が焦点化されているかを考察した。政府の有識者会議が主に人的資本の有効活用という観点からフリースクールの制度化を捉えているのに対し、「普通学級」へのインクルージョンを主張してきた障害者運動は「分離・別学体制」の強化と捉えている。そして、さまざまな批判があるなかで、NPO 法人フリースクール全国ネットワーク代表理事の奥地圭子は、不登校の子どもの権利を保障するという観点から、フリースクールの制度化を推進していることをインタビューにより明らかにした。
著者
田中 佑弥 上田 慎治エジウソン 寺内 文雄 青木 弘行
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
pp.150, 2013 (Released:2013-06-20)

近年デザイン開発では製品・サービスなど基本的な機能である機能的価値に加えて、人の心地や感覚、感動といった感性的価値を考慮したものづくりが盛んに行われている。モノの長期使用を考えたとき、感性価値はなくてはならない要素であるが、機能的価値とは異なり主観的な価値であるため、使う人の年代や経験に左右されやすい。本研究ではこうした感性価値の中から実際の製品コンセプトとしても取り上げられることの多い「温もり」という印象に着目し、世代別の価値観の違いを共分散構造分析(SEM)を用いた因果モデルにより視覚的に表し、各世代の評価差を明らかにすることを目的とした。20代、40代、50代の各世代の因果モデルの比較によって、20代の世代が「生物的な」という評価項目に対して「温もり」を感じていることがわかった。この傾向は他の世代では見られず、20代に特有のものであった。そこで、「生物的な」という感性的価値をデザイン要件とした検証モデルを複数制作し、実際に20代の被験者を用いてVAS法とSD法による印象評価を行い検証した。
著者
田中 佑弥
出版者
武庫川臨床教育学会
雑誌
臨床教育学論集 = Journal of clinical education research (ISSN:18823874)
巻号頁・発行日
no.10, pp.25-37, 2018-12-25

奥地圭子は、日本の代表的なフリースクールである東京シューレを1985 年に開設したことで知られている。本稿では、教育雑誌『ひと』(太郎次郎社)における記述に着目して、フリースクール開設以前の奥地圭子の教育観を考察した。登校拒否児の母親であり、小学校教師であること、つまり「母親教師」であることを通して、奥地の教育観は培われていった。