著者
青木 弘行 久保 光徳 鈴木 邁 後藤 忠俊 岡本 敦
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
no.96, pp.47-54, 1993-03-01
被引用文献数
1

エレクトリックギター用材料に適した新しい材料選択基準を求めるため、音色に強い影響を与えるヤング率、振動損失、密度、そして周波数スペクトル分布に代表される物理特性と、エレクトリックギターの音色としての「ふさわしさ」に対する評価尺度である感覚特性との相関関係について検討した。木材、プラスチック、金属に対する打撃振動、および振動音測定実験を行い、物理特性および音響特性の解析を行った。感覚特性は、これらの振動音の、エレクトリックギターに対する、相対的な「ふさわしさ」であるため、一対比較法を用いた官能評価実験により解析を行った。本研究によって解析された物理特性と感覚特性との関係を明確にするため、典型的な楽器用材料選択基準による評価を行うと同時に、これらの特性の相関式を、重回帰分析法に従って求め、エレクトリックギター用材料選択基準の検討を行った。これらの検討より、選択基準の説明因子である密度、特にその値の対数値とヤング率の影響が重要であることが明らかとなった。さらに、密度やヤング率を操作できる材料である繊維強化複合材料(GFRP、CFRP)の、エレクトリックギター用材料としての有効性について検討し、高剛性、低密度であるCFRPの利用可能性を確認した。
著者
岡田 栄造 寺内 文雄 久保 光徳 青木 弘行
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.9-16, 2001-03-31 (Released:2017-07-21)
参考文献数
17
被引用文献数
3

本稿の目的は、明治時代半ばに学校用腰掛けの改善案のなかで提案された座面の昇降機構が、その後どのように展開し、結果、事務用椅子として普及したFK式回転昇降椅子が誕生した過程を明らかにすることにある。そのために、明治時代半ば以降昭和初期までに公示された椅子の昇降機構に関する工業所有権を調査し、FK式が生み出された詳しい経緯を考察した。最初にFK式の原案となった岩岡式以前の昇降機構の展開を調査し、次いで岩岡式の開発過程を、最後に寿商店によるFK式の開発経過を調査した。調査の結果、岩岡式が、それ以前に開発されていた7種類の昇降方式のうち「滑動式-単脚」の方式を参考に改善を進めたなかで生み出されたことが明らかとなった。そして、岩岡式において椅子の構造部材として鋳物が採用されたことが、金属加工業を椅子製造プロセスに介在させる必要を生じさせた点で、重要なポイントとなっていたことを指摘した。さらに、寿商店によるFK式の開発が、実際に金属加工業者の協力を得て進められたことを確認した。
著者
矢野 悠久子 上田 愼治エジウソン 寺内 文雄 青木 弘行
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
pp.293, 2012 (Released:2012-06-11)

牛乳を原料としたプラスチックを家庭でも楽しめる造形材料として、生成方法と造形表現の可能性を検討した。牛乳に含まれるタンパク質であるカゼインを原料としたカゼイン樹脂は一般家庭でも作ることができる。同じく牛乳に含まれるタンパク質であるホエイプロテインからもプラスチックの生成が可能である。2つのプラスチックは食べられるもののみでできることから子供でも安心して扱える。まずこれらのプラスチックについて文献に基づいた生成実験を行い、さらに材料の混合比や加熱方法、膨張剤・食用色素の添加など条件を変えた実験を行った。カゼイン樹脂は皺ができ凸凹した見ためと感触が、ホエイプロテインを使ったプラスチックはツヤがありなめらかな感触が特徴的なものになった。また小学生に制作を体験してもらい、フィードバックを得た。これを基にそれぞれのプラスチックの特徴を活かした造形作品例を制作した。小学生を対象にしたワークショップや上級生が難しい作業をサポートできる縦割り活動などへの取り入れが期待できる。
著者
寺内 文雄 久保 光徳 青木 弘行 橋本 英治
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.45-52, 2005-03-31
被引用文献数
3

近年の環境問題において、モノを長く使うことに対する意識の低さが、問題解決に向けた障害の一つとなっている。本研究においては、モノの長期使用を念頭に置き、生活者の意識面における問題を解決するための方策として、モノに対して抱く愛着に着目した。そして、モノが有する様々な感性要素と愛着の発生に関わる因果モデルを、構造方程式モデリング手法を用いることにより構築した。また、モノに対する生活者の志向態度を因子分析とクラスター分析手法を用いてに四タイプに分類し、各タイプの因果モデルを検討することにより、その特徴と特質を明らかにした。最後に、これらの検討結果を踏まえて、愛着を誘発するための人工物設計指針6項目 : 完成度の高い造形処理、素材の特性を生かした質感表現、頭に馴染む使い勝手のよい機能、使い込むことによって見いだされる新たな仕組みの導入、愛着感構成要素の実現、本物感を満たすブランド価値の確立、を導いた。
著者
青木 弘行 久保 光徳 鈴木 邁 後藤 忠俊 岡本 敦
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.1993, no.96, pp.47-54, 1993-03-01 (Released:2017-07-25)

エレクトリックギター用材料に適した新しい材料選択基準を求めるため、音色に強い影響を与えるヤング率、振動損失、密度、そして周波数スペクトル分布に代表される物理特性と、エレクトリックギターの音色としての「ふさわしさ」に対する評価尺度である感覚特性との相関関係について検討した。木材、プラスチック、金属に対する打撃振動、および振動音測定実験を行い、物理特性および音響特性の解析を行った。感覚特性は、これらの振動音の、エレクトリックギターに対する、相対的な「ふさわしさ」であるため、一対比較法を用いた官能評価実験により解析を行った。本研究によって解析された物理特性と感覚特性との関係を明確にするため、典型的な楽器用材料選択基準による評価を行うと同時に、これらの特性の相関式を、重回帰分析法に従って求め、エレクトリックギター用材料選択基準の検討を行った。これらの検討より、選択基準の説明因子である密度、特にその値の対数値とヤング率の影響が重要であることが明らかとなった。さらに、密度やヤング率を操作できる材料である繊維強化複合材料(GFRP、CFRP)の、エレクトリックギター用材料としての有効性について検討し、高剛性、低密度であるCFRPの利用可能性を確認した。
著者
劉 建中 久保 光徳 青木 弘行 寺内 文雄
出版者
Japan Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.29-38, 1996-02-15 (Released:2010-03-12)
参考文献数
14
被引用文献数
4 3

本研究では, 5名の男子学生を被験者とし, 弛緩状態での座姿勢と仰臥姿勢において, 2-20Hzの垂直正弦振動を受ける人体の振動伝達特性を, 伝達率と位相差によって検討した. 伝達率は, 人体上の振動加速度実効値を振動台垂直加速度実効値に対する比率で表したものとし, 位相差は, 人体と振動台間の振動加速度の位相角で表した. また振動刺激に対する身体各部位の揺れの感覚について主観評価を行った. その結果, (1) 2Hzでは座姿勢, 仰臥姿勢ともに体全体が1つの剛体として, 振動台とほぼ同じ振幅と位相で振動した. (2) 5Hzと8Hzでは身体の振動が強くなって, しかも姿勢と被験者により各部位の振動状況がかなり異なった. (3) 11-20Hzの範囲では足部と頭部の振動を強く感じる一方, 腹部と胸部はほとんど減衰していることが明らかとなった. 本実験の結果から, 人体における振動の伝播は振動刺激の種類, 方向, 周波数, 強度のほかに, 被験者の体型と姿勢などから大きな影響を受けていることが明らかとなった.
著者
松岡 由幸 谷郷 元昭 寺内 文雄 久保 光徳 青木 弘行
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.57-66, 1997
参考文献数
8

近年, 製品に対するニーズが多様化する傾向にあり, 製品開発においてユーザーの嗜好性の違いを考慮した設計方法の構築が望まれている。そこで, 嗜好性の違いを考慮する方法として, ロバスト設計の方法に注目した。ロバスト設計とは, 製品における機能のばらつきに対処する方法である。本研究では, この方法を基に, 機能のばらつきを人の嗜好性の違いに置き換えることで, 嗜好性の違いを考慮する設計方法の構築を図った。具体的には, 自動車用シートのギャザーパターンをケーススタディーとして, シート設計におけるいせ込み量と引張力を制御因子, ギャザーパターンの外観に対する嗜好性の違いを誤差因子とし, ロバスト設計の手順に従うことで設計方法の構築を試みた。また, 従来の設計方法と比較することにより, 本方法の有効性を検討した。その結果, 今回の方法が製品設計において嗜好性の違いを考慮する上で有効であることを示した。
著者
青木 弘行 久保 光徳 鈴木 邁 稲村 栄一郎
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.1990, no.82, pp.65-72, 1990-11-30 (Released:2017-07-25)

電子レンジ加熱下における食品の温度分布を予測する昇温理論を適用して,均一加熱を目的とした容器形状の検討を行った。設計の対象としては一般的な角型容器を取り上げ,コーナー曲率半径・容器の深さ・半減深度をパラメータとして検討を行った。形状の決定は,容器形状をマイクロ波の入射数によって規定される領域に分割し,各領域における比電力を算出し,比電力の最大値と最小値の比をもとにした均一分布度を定義することにより実施した。・その結果,コーナー曲率半径の増大および容器の深さの減少にともなって,加熱むらが抑制される傾向にあることが明らかとなり,これらの結果をもとにして最適容器形状の提案を行った。また,本検討で実施した一連の手順を整理,体系化することにより,均一加熱を目的とした電子レンジ用容器の形状設計指針を作成した。
著者
呉 慧太 上田 慎治エジウソン 寺内 文雄 青木 弘行
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
pp.149, 2013 (Released:2013-06-20)

飲料は、容器の形状や材質によって味の印象が変化する。また、ワインやビールなど一部の嗜好品には、それぞれの味や香りの特徴に合わせた様々な形状の容器が存在する。それらは形状により、飲料の流れや、香り方を変化させることで飲料を美味しくしている。そこで日常的に飲む飲料でも、特徴に合った形状ならば、より美味しくなる可能性があると考えた。 本研究では、容器形状が飲料に与える影響を明らかにし、それに基づく飲料容器の提案を目的とした。 普段飲む飲料に関する調査から冷めたコーヒーに対する不満が多く見られたため、冷めたコーヒーでも最後まで美味しく飲める飲料容器の提案を考えた。 様々な形状をしたコップのモデルで実験を行い、冷めたコーヒーの不快な特徴を打ち消すような飲料容器を制作した。それらを用いて印象評価を行い仮定の実証と、新たな課題の発見をした。
著者
橋本 英治 寺内 文雄 久保 光徳 青木 弘行 鈴木 邁
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究. 研究発表大会概要集 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
no.45, pp.28-29, 1998-10-30

In case of this study, as the means to fulfill the lifetime that object has, the affection for object was systematized. Fron the results of the questionnaire investigation and the interviewing investigation that uses the Repertory Grid Technique, the graph systematized was made. As a result, the four factors of occurrence of affection was found out. That factors is that object be equipped with the excellent structure and mechanism, that good materials be used for object, that object be equipped with the characteristic which isn't in the other object and that the new sense of value occurs to the object.
著者
寺内 文雄 大釜 敏正 増山 英太郎 久保 光徳 青木 弘行
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.7-12, 1995-07-31 (Released:2017-07-25)
参考文献数
2
被引用文献数
1

木目模様の方向の嗜好とその背景にある心理的要因を明確にするために,模様の方向の官能評価実験およびイメージの解析を行った。官能評価実験には(1)木目模様の複写,(2)木目模様を連想させる線模様,(3)山形模様の3種類の模様を用い,これらの方向の嗜好を一対比較法によって評価した。評価に寄与する心理的要因はカード間の評価の相関関係と,数量化理論III類によるイメージ構造の解析結果から検討を行った。その結果,木目模様では方向の嗜好が水平・垂直方向に偏り,なかでも上方向と右方向の評価が高いことが確認できた。また,数量化理論III類によって,模様イメージはI)緊張感,II)親近感,III)活動感の3要因で構成されることが明確となった。これらの結果を併せて検討したところ,模様イメージのI)緊張感とII)親近感が木目模様の方向の嗜好に影響を及ぼすことが示唆された。
著者
松岡 由幸 谷郷 元昭 寺内 文雄 久保 光徳 青木 弘行
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.57-66, 1997-11-30 (Released:2017-07-25)
参考文献数
8
被引用文献数
1

近年, 製品に対するニーズが多様化する傾向にあり, 製品開発においてユーザーの嗜好性の違いを考慮した設計方法の構築が望まれている。そこで, 嗜好性の違いを考慮する方法として, ロバスト設計の方法に注目した。ロバスト設計とは, 製品における機能のばらつきに対処する方法である。本研究では, この方法を基に, 機能のばらつきを人の嗜好性の違いに置き換えることで, 嗜好性の違いを考慮する設計方法の構築を図った。具体的には, 自動車用シートのギャザーパターンをケーススタディーとして, シート設計におけるいせ込み量と引張力を制御因子, ギャザーパターンの外観に対する嗜好性の違いを誤差因子とし, ロバスト設計の手順に従うことで設計方法の構築を試みた。また, 従来の設計方法と比較することにより, 本方法の有効性を検討した。その結果, 今回の方法が製品設計において嗜好性の違いを考慮する上で有効であることを示した。
著者
矢野 悠久子 上田 愼治エジウソン 寺内 文雄 青木 弘行
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.59, 2012

牛乳を原料としたプラスチックを家庭でも楽しめる造形材料として、生成方法と造形表現の可能性を検討した。牛乳に含まれるタンパク質であるカゼインを原料としたカゼイン樹脂は一般家庭でも作ることができる。同じく牛乳に含まれるタンパク質であるホエイプロテインからもプラスチックの生成が可能である。2つのプラスチックは食べられるもののみでできることから子供でも安心して扱える。まずこれらのプラスチックについて文献に基づいた生成実験を行い、さらに材料の混合比や加熱方法、膨張剤・食用色素の添加など条件を変えた実験を行った。カゼイン樹脂は皺ができ凸凹した見ためと感触が、ホエイプロテインを使ったプラスチックはツヤがありなめらかな感触が特徴的なものになった。また小学生に制作を体験してもらい、フィードバックを得た。これを基にそれぞれのプラスチックの特徴を活かした造形作品例を制作した。小学生を対象にしたワークショップや上級生が難しい作業をサポートできる縦割り活動などへの取り入れが期待できる。
著者
杉松 献理 上田 慎治 寺内 文雄 青木 弘行
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
pp.267, 2012 (Released:2012-06-11)

人は物体の形を見た際に様々な感情を抱きます。たとえば不安感や緊張感が感じられる物体からは同時に魅力が感じられます。本研究では,人が全体重をかけて 乗る自転車を不安感や緊張感の感じられる形にすることで日常では味わえない乗り心地が得られると考え,このことからワイヤーの柔軟性を利用したステアリン グ構造およびサスペンション機能を備えた,乗車可能な強度ある自転車フレームについて提案します。
著者
近藤 祐一郎 青木 弘行 宮崎 清
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.37-44, 1998-09-30 (Released:2017-07-21)
参考文献数
26
被引用文献数
2

本研究は籾殻の炭化法を変化させることによって得られる性状の変化を確認し, それに基づいて稲作農村地域における水質浄化材などへの有効利活用法について探求したものである。実験では, 熱重量測定実験, 比表面積測定実験, 細孔分布測定実験を行い, 以下の知見を得た。1)籾殻燻炭は, 活性炭と比較して炭素分は少ない反面, 灰分(ミネラル分)は多い。しかし, 稲作農村地域では排水処理材の他にもさまざまな応用・展開が可能であり, 十分に利用価値のある資源である。 2)野焼き法で製造した籾殻燻炭は単位価格あたりに対する比表面積が高く, 活性炭や木炭と比べて経済的である。 3)被吸着物質に応じた細孔径を有する籾殻燻炭を, 炭化条件を変化させることにより製造することができる。 4)稲作農村地域では生活雑排水が水質汚染源であり, 野焼き法と320℃, 520℃で炭化した3種類の籾殻の併用が最も効果的である。
著者
宮崎 清 青木 弘行 田中 みなみ
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.1989, no.72, pp.67-74, 1989-03-31 (Released:2017-07-25)

本小論は、「伝統的工芸品・椀の意匠に関する研究(1)」に続いて、日本における椀の発生と歴史的発展過程に注目し、室町時代までの椀の造形的展開について、遺跡資料および絵画史料を手がかりとして、観察と解析を行ったものである。その結果、筆者は次の諸点を明らかにした。(1)日本における漆塗椀の原型は縄文時代に誕生し、弥生時代の轆轤技術、鉄器の導入を経て、挽物としての基本的な椀の制作技術がほぼ完成された。(2)飛鳥・奈良・平安時代には、大陸の食様式の導入ならびに主食副食分離の発展と対応してさまざまな形状の椀が制作され、現代の椀の造形文化がほぼ形成された。(3)鎌倉・室町時代に入ると、漆の塗分けや漆絵などの装飾技術が発達し、椀形状のバリエーションも一層豊かになった。桃山時代には、大陸の造形文化から独立した、日本固有の椀の造形文化が確立された。
著者
田中 佑弥 上田 慎治エジウソン 寺内 文雄 青木 弘行
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
pp.150, 2013 (Released:2013-06-20)

近年デザイン開発では製品・サービスなど基本的な機能である機能的価値に加えて、人の心地や感覚、感動といった感性的価値を考慮したものづくりが盛んに行われている。モノの長期使用を考えたとき、感性価値はなくてはならない要素であるが、機能的価値とは異なり主観的な価値であるため、使う人の年代や経験に左右されやすい。本研究ではこうした感性価値の中から実際の製品コンセプトとしても取り上げられることの多い「温もり」という印象に着目し、世代別の価値観の違いを共分散構造分析(SEM)を用いた因果モデルにより視覚的に表し、各世代の評価差を明らかにすることを目的とした。20代、40代、50代の各世代の因果モデルの比較によって、20代の世代が「生物的な」という評価項目に対して「温もり」を感じていることがわかった。この傾向は他の世代では見られず、20代に特有のものであった。そこで、「生物的な」という感性的価値をデザイン要件とした検証モデルを複数制作し、実際に20代の被験者を用いてVAS法とSD法による印象評価を行い検証した。
著者
齋藤 力也 寺内 文雄 久保 光徳 青木 弘行
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第54回研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.A19, 2007 (Released:2007-06-09)

若い世代を中心に製品選択の意識や情報機器の使用状況は他の世代と比べて特殊に感じられる。接触や使用頻度が高く、仕事やコミュニケーションツールとして多面的に機能するパソコンや携帯電話であるが、買い替えは頻繁に行われる。そこで、製品に抱く愛着やパートナーシップを定量的に分析し、生活者の意識とモノに抱く愛着の関係性および生活観ごとに重要視されている要因を探り、モノの評価構造を解明することを目的とした。 結果として、情報機器への仲間意識や親しみなどの愛着感が見られたことから、「使い込むことによる充実感」が得られる可能性が示唆された。生活者の中には複数の携帯電話をシーンに合わせて使い分ける者や、これ以上新機能は不要で、壊れても生産中止でない場合は再び購入したいという「お気に入り」やファン心理の存在も確認された。