- 著者
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田中 八州夫
- 出版者
- 同志社大学
- 雑誌
- 同志社政策科学研究 (ISSN:18808336)
- 巻号頁・発行日
- vol.14, no.2, pp.209-221, 2013-03
研究ノート・資料(Note)2000年に創設された介護保険制度は、それまで主に女性が担ってきた家庭内での介護を、社会全体で支えることを目的に創設された。そして、わが国の介護保険制度は「介護を要する状態」の要介護者だけでなく、「介護を要する状態に陥るおそれがある」要支援者も介護保険での給付対象としている。2000年の介護保険制度の創設後、要支援や要介護1の軽度認定者が著しく増加した状況に対応するため、2005年の法改正で介護予防の拠点として地域包括支援センターが創設された。しかし、その後も要支援認定者等の軽度認定者は増加を続け、地域包括支援センターは介護予防支援業務に忙殺され、本来の業務である包括的支援事業に取り組む余裕がない状況が続いている。2000年に創設された介護保険制度の検討過程において、軽度者に対して予防的給付を行うことは、保険事故に対して給付を行う保険制度の原則に反するのではないかという意見も多く出された。しかし、最終的には要介護と要支援は一体のものとして取り扱うべきであると結論づけられ、要支援認定者に対しても予防給付が行われることとなった。介護保険の本来の目的である「介護の社会化」の「介護」の概念から逸脱しているケースが多くみられる現状に対し、本論文では、要支援者に対する予防給付が過剰に発生するメカニズムについて、申請時の状況、それに続く要介護認定における認定調査と介護認定審査会およびケアマネジメントの各プロセスの状況分析をもとに考察を行うことで、申請・利用の件数が増加する仕組みを明らかにしていく。