著者
仲田 かおり 清水 雅俊 島 尚司 田中 将貴 堀 啓一郎
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.38, no.11, pp.1110-1114, 2006
被引用文献数
5

症例は73歳,男性.急性舌腫脹による咽頭腔の閉塞で呼吸困難をきたし救急搬送された.ただちに経鼻エアウェイ挿入で気道確保のうえ,同チューブから酸素投与がなされた.内視鏡検査では鼻咽腔および喉頭には浮腫がおよんでいないことが確認された.舌腫脹は強力ネオミノファーゲンCとマレイン酸クロルフェニラミンの投与により,しだいに軽快して約5時間後には会話可能となった.発症10時間後に施行されたMRI検査では,咽頭腔を塞ぐように舌が腫脹していたが舌内に膿瘍や出血は認められなかった.上記の投薬を続けることにより舌腫脹は4日後には完全消失した.急性舌腫脹の原因は,66歳時から80カ月間投与されていたアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬リシノプリルによる血管浮腫と考えられた.また,発症時の検査で腎機能障害が増悪しており,感冒に対して前日まで内服していた消炎鎮痛剤が原因と考えられ,さらに,リシノプリルの尿中排泄低下により血中濃度上昇を助長したものと考えられた.わが国におけるACE阻害薬が原因の血管浮腫は比較的稀であり,とくに舌腫脹の報告は本例を含めて計11例に過ぎない.しかしながら,死亡例も報告されており,気道確保を含めた適切な対応が重要である.また,ACE阻害薬内服者に顔面や口唇の浮腫や舌の違和感などの訴えがあれば,ただちに投与は中止されるべきである.
著者
牧之段 恵里 佐々木 祥人 倉田 晴子 田中 将貴 堀 啓一郎
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.3, no.6, pp.567-571, 2004 (Released:2011-11-07)
参考文献数
22

81歳,女性。1947年から1年間美白のために,砒素(詳細不明)を1年間内服していた。1990年頃より鱗屑を伴う紅褐色皮疹の増加を認めていた。2001年8月1日,当科紹介受診となった。計30ヵ所切除行い、組織学的に,右手掌の砒素性角化症以外は,すべてBowen病と診断した。また,過去10年間の砒素が誘因と考えられる多発性Bowen病の13症例の発病までの期間は,平均39年であった。