著者
根地嶋 誠 横山 茂樹 田中 正直 大城 昌平
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.88, 2003 (Released:2004-03-19)

【はじめに】臨床上、徒手的に筋圧迫することによって関節運動時における疼痛が軽減することを経験する。このような筋圧迫が筋活動に及ぼす影響について検討した報告は少なく、筋圧迫が筋収縮や筋緊張にどのような影響を与えるかということは明らかではない。そこで本研究では、大腿直筋において徒手的な筋圧迫によって大腿四頭筋の筋活動に及ぼす影響について検証する。【方法】対象は下肢に障害のない健常男性10名(平均年齢23.7±1.3歳)とした。測定筋を右側の内側広筋、外側広筋、大腿直筋とし、十分な皮膚処置後、電極中心間距離20mmにて、各筋腹の中央に貼付した。測定肢位はサイベックスを用いた端坐位における、股関節80度屈曲位、膝関節60度屈曲位とした。まず膝伸展時最大等尺性収縮(MVC)におけるピークトルクの測定を3秒間3回行い、最大値(PT)を求めた。次に(1)60%PT時の膝伸展時等尺性収縮をおこなった場合と(2)筋圧迫を加えた上で60%PT時の膝伸展時等尺性収縮をおこなった場合について筋活動を測定した。なお、60%PTは視覚的フィードバックとし、目標値に達した時点から3秒間計測し、3回施行した。このとき足関節は背屈とし、両上肢は備え付けのハンドルを握り、可能な限り上体を動かさないよう指示した。また圧迫方法は、一名の理学療法士が一側の母指を使用し、部位は大腿直筋の電極間中心部より5横指下、強度は痛みが出現しない程度、方向は筋走行に対し垂直に圧迫を加えた。なお、実験に先立ち、課題遂行の正確性、圧迫強度の程度を確認した。解析方法は、キッセイコムテック社製BIMUTAS2を用い、各条件の収縮した3秒間のうち中央2秒間の積分値を算出、3回の平均を求めた。次に、得られた各筋におけるMVC時の積分値を基準に正規化し、%IEMGとして表した。圧迫の有無による影響を比較するためWilcoxon の符号付順位検定を用い、有意水準は5%未満とした。【結果および考察】内側広筋と外側広筋における筋圧迫の有無による差はみられなかった。一方、大腿直筋は筋圧迫を加えることよって%IEMGが有意に低下した(p < 0.05)。これは、筋圧迫により筋の形態や筋内圧が変化したことで、筋活動が抑制されたものと推察される。また大腿直筋を圧迫した場合、圧迫しない場合より低い値を示した症例が10名中9名存在したが、この中で内側広筋、外側広筋のいずれか高まった症例が7名存在した。これらのことから大腿直筋を徒手的に筋圧迫することによって大腿直筋の筋収縮は低下するとともに、内側広筋もしくは外側広筋の筋収縮が高まることによって筋出力が変化したと推察される。
著者
田中 正直 根地嶋 誠 横山 茂樹
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2002, pp.78, 2003

【はじめに】大腿四頭筋に対する筋力強化方法として、一般的に端座位膝関節伸展運動が実施されている。この運動を実施するにあたり、股関節や足関節の肢位の違いが大腿四頭筋の筋活動に及ぼす影響に関する報告は散見される。本研究では骨盤の肢位に着目し、骨盤傾斜角の変化が大腿四頭筋の筋活動に及ぼす影響について検証したので報告する。【対象と方法】対象は下肢に障害のない健常男性11名(平均年齢23.7±2.0歳)とした。尚、対象者には研究目的を説明し同意を得た。測定筋は右側の内側広筋(VM)、外側広筋(VL)、大腿直筋(RF)の3筋とし、十分な皮膚処置後、電極を中心間距離30mmにて各筋腹中央に貼付した。表面筋電計は日本電気三栄社製マルチテレメーター511を用い、表面筋電波形を導出した。測定肢位は、端座位にて股関節を内外旋および内外転中間位とし、骨盤を(1)最大前傾位:PA、(2)最大後傾位:PPの2条件とした。各条件下にて3秒間の膝関節伸展位最大等尺性収縮を3回ずつ測定した。尚、測定順序は無作為とし、疲労を考慮して各条件間に2分間の休息を取り入れた。解析方法はキッセイコムテック社製BIMUTAS2を用い、測定開始0.5秒から2.5秒の2秒間に得られた筋電波形の積分値を算出した。各条件下において3回の平均値を求めた。さらに背臥位でのQuadriceps settingの平均積分値を100%として、各条件を正規化し%IEMGとして表した。またRFに対するVMおよびVLの活動量を比較する指標として、%VM/RF比及び%VL/RF比を算出した。統計学的処理は、各筋における骨盤前傾位と後傾位での筋活動の違いを比較するため、Wilcoxonの符号付順位検定を用いた。尚、有意水準は5%および1%未満とした。【結果】骨盤肢位別による影響は、%IEMGに関してVMではPPはPAより有意に高かった(p<0.01)。またVLでもPPはPAより有意に高かった(p<0.05)。RFでもPPはPAより有意に高かった(p<0.01)。また%VM/RF比及び%VL/RF比に関して、骨盤肢位による有意差は認められなかった。【考察】今回の結果より、VM・VL・RFすべての筋において骨盤前傾位より後傾位の方が筋活動は高まっていた。つまり、骨盤を後傾する事によって股関節は相対的に伸展位となるために拮抗筋であるハムストリングスの筋張力は低下すると考えられる。このことによって、大腿四頭筋は収縮しやすくなったと推測される。また、%VM/RF比及び%VL/RF比について有意差が認められなかったことから、ニ関節筋による影響は受けにくかったものと思われる。