- 著者
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田中 浩朗
- 出版者
- 東京電機大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2015-04-01
本研究の目的は,第二次世界大戦中に化学工業統制会会長を務めた石川一郎(1885-1970)の個人文書『石川一郎文書』(東京大学 経済学部図書館所蔵,マイクロフィルム版,全279リール)を中心史料として用い,「産業界からみた科学技術動員」の実態を解明することである。平成29年度は,本年度購入した5リールを含め,本研究に必要と判断した156リールについて一応のサーベイを完了し,昨年度と同様に科学技術動員に関連する資料の探索と目録作成を進めながら,化学工業統制会が科学技術動員にとって果たした役割について検討した。本年度の調査では,科学技術動員史の観点からの石川文書の全体像がおぼろげながら明らかになった。まず,全279リールという膨大な資料のうち,戦時中の資料を含むものは意外に少なく,全体の約半分程度であるということである。また,化学工業統制会の活動において,技術的隘路を克服することの重要性は相対的に低く,むしろ資材不足などが生産増強の重要な隘路と考えられており,統制会の技術関係の活動に関する資料は当初期待したほどには見出せなかった。特に,民間企業と軍・学・官との協力関係に関する資料は,断片的には存在するものの,まとまった資料はほとんど見出せなかった。当初の予定よりも購入リールの本数は少なくて済んだため,科学工業統制会の監督官庁である軍需省の資料(『軍需省関係資料』全8巻,復刻版;通産政策史資料オンライン版)を購入し,化学工業統制会をとりまく産業関係組織との関連を考察し始めた。