著者
藤木 大介 田中 瑠音
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
日本心理学会大会発表論文集 日本心理学会第84回大会 (ISSN:24337609)
巻号頁・発行日
pp.PL-007, 2020-09-08 (Released:2021-12-08)

近年,小中学校の教科書などにも見られる文章形式として,複数の人物の会話の様子を記したものがある。学生向けの概論書等ではそれを読み進めることで新たな知識が得られるようになっているものもある。こういった対話型のテキストに関し,これまでにも少ないながらもその有用性が検討されてきたが,必ずしもポジティブな結果は得られていない。そこで本研究では,読解を促進する方略の使用を促す発話を多く含んだ対話型テキストを作成し,その有効性を検討した。その結果,通常の形式の説明的文章を読んだ群と比較して,これまでの研究で用いられてきたのと同等の方法で作成された対話型テキストを読んだ群の読解成績が劣ったが,方略を多く含んだ対話型テキストは劣らない成績となり,かつこれらの2つの対話型テキストは通常の文章と比較して読みやすさ等の主観的評定に優れるという結果であった。従来の対話型テキストの成績が劣るのは,対話という親しみやすい表現により結束性等の過大評価が起こり,それに伴って能動的な推論の低下が起こったことが考えられるが,読解方略を多く含めることでこれも抑えられ,主観的にも受け入れやすい文章となることが示唆された。