著者
横山 真弓 坂田 宏志 森光 由樹 藤木 大介 室山 泰之
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.65-71, 2008 (Released:2008-07-16)
参考文献数
7
被引用文献数
5

兵庫県におけるツキノワグマの保護管理計画について,計画目標の達成状況と施策の効果を評価するモニタリングの現状と課題を報告する.実施しているモニタリングは,被害防止に直結する項目と生息状況の把握に必要となる項目を優先しており,個体数推定は行っていない.計画を施行した2003年から5年間に捕獲されたツキノワグマについては,学習放獣することを基本とし,総捕獲数(121頭)の86%(104頭)を学習放獣した.放獣後は,行動監視を徹底し,不要な捕殺を避ける一方,再被害を確認した場合には,速やかに次の対策に移行する措置をとった.これらの出没対応によって,個体数の減少に一定の歯止めをかけることができたと考えられる.学習放獣の効果を上げるためには,放獣と同時に誘引物の徹底管理や追い払いの対策を行うことが必要であるが,それぞれ対策上の課題が山積しており十分ではない.追い払いや学習放獣の手法改善,誘引物管理の普及啓発などについて,より効果的な方法を実施していく必要がある.県境を越えた広域管理については新たな枠組みづくりを近隣府県や国と検討していくことが必要である.これらの課題に取り組みながら,科学的データに基づく対応を浸透させていくことが被害防止と個体群の保全につながると考えている.
著者
藤木 大介 若杉 佳彦 楞野 祥子 岩本 理沙 島田 英昭
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.88, no.4, pp.390-395, 2017-10-25 (Released:2017-10-25)
参考文献数
19

When reading narratives, readers infer the emotions of characters and empathize with them. Emphathic responses can be parallel or reactive. This study, based on the dual-process theory, investigated which emotional responses (i.e., emotion inference, parallel response, or reactive response) in reading are caused by system 1 (unconscious, implicit, automatic, low-effort process) and which depend on system 2 (conscious, explicit, controlled, high-effort process). As cognitive load affects responses influenced by system 2, the effects of working memory load on reading were examined. Participants were divided into two groups based on working memory capacity, and instructed to read narratives under a dual-tasks situation similar to the reading span test. The results revealed no effect of cognitive load on inference of characters’ emotions. However, additional load did affect both types of empathic responses in the low-capacity group. Further, when cognitive load was low, emotion inference correlated with both empathic responses. These results indicate that emotion inference is an automatic process, whereas empathic responses are controlled processes.
著者
阪口 翔太 藤木 大介 井上 みずき 山崎 理正 福島 慶太郎 高柳 敦
出版者
京都大学大学院農学研究科附属演習林
雑誌
森林研究 = Forest research, Kyoto (ISSN:13444174)
巻号頁・発行日
no.78, pp.71-80, 2012-09 (Released:2013-10-08)

ニホンジカ(シカ)の森林植生への影響が懸念されている京都大学芦生研究林において,主要植物種に対するシカの嗜好性を調査した。嗜好性を把握できた90種の植物のうち,嗜好性が高いと判断された種は74種に上った。この結果は,本地域の植物群集の種のプールの大部分が,シカに嗜好されやすい種によって担われていることを示唆している。よって,シカの採食圧が本地域で持続する限り,多くの種で個体群が衰退し,地域のフロラが貧弱化する可能性がある。残りの16種については,シカの食痕をほとんど確認できず,かつ個体の矮小化現象が見られなかったことから,シカの嗜好性が低い種であると判断された。これらの種は,シカの採食によって嗜好性種が消失した後に分布を拡大し,種多様性・機能的多様性の低い群集を再構築する可能性が高い。しかし,シカの嗜好性が状況依存的に変化しうるという側面を考慮すれば,本論文で挙げた低嗜好性種も将来的にはシカに嗜好される可能性もある。今後,芦生地域の豊かなフロラを保全するためには,シカの生息密度と植物群集の変化をモニタリングしながら,シカの生息密度を適切なレベルで管理する努力が必要になるだろう。
著者
藤木 大介 岸本 康誉 坂田 宏志
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.55-67, 2011-05-30 (Released:2018-01-01)
参考文献数
43
被引用文献数
5

近年、氷ノ山ではニホンジカCervus nippon(以下、シカと呼ぶ)が頻繁に目撃されるようになってきている。一部の広葉樹林ではシカの採食により下層植生の急激な衰退も観察されている。シカの採食の影響は周辺山系(北山系、東山系、南山系)の広範囲にわたって深刻化している恐れがあるが、現状では断片的な情報しかなく、山系スケールでの状況把握はなされていない。氷ノ山の貴重な植物相と植物群落を保全するためには、氷ノ山とその周辺域におけるシカの動向と植生変化の状況について早急な現状把握を行い、地域植生に対してシカが及ぼす生態リスクについて評価する必要がある。そこで本報告では氷ノ山とその周辺山系を対象に、シカによる落葉広葉樹林の下層植生の衰退状況、周辺山系におけるシカの分布動向、地域植物相への食害状況の把握に関する調査を行った。その結果、調査を行った2007年時点において、氷ノ山では山頂から東と南に伸びる山系において下層植生が著しく衰退した落葉広葉樹林が面的に広がっていることが明らかとなった。下層植生が衰退した理由としては、1999年以降、これらの山系においてシカの高密度化が進んだためと思われた。また、両山系でシカの高密度化が進んだ理由としては、隣接地域のシカ高密度個体群が両山系へ進出したことが考えられた。さらに、その背景には、1990年代以降の寡雪化が影響していることが示唆された。一方、最深積雪が3m以上に達する氷ノ山の高標高域では2007年時点でも目立った植生の衰退は認められなかった。しかし、春季から秋季にかけて高標高域へシカが季節移動してくる結果、高標高域でも夏季を中心にシカの強い採食圧にさらされている。山系では13種のレッドデータブック種(RDB種)を含む230種もの植物種にシカの食痕が認められ、一部のRDB種では採食による群落の衰退も認められた。山頂の東部から南部にかけては、すぐ山麓までシカの高密度地域がせまっていることから、高標高域の積雪が多くても、継続的にシカの採食圧にさらされる状況となっている。このため近い将来、高標高域においても植生が大きく衰退するとともに、多くの貴重な植物種や植物群落が消失する可能性がある。
著者
服部 保 栃本 大介 南山 典子 橋本 佳延 藤木 大介 石田 弘明
出版者
植生学会
雑誌
植生学会誌 (ISSN:13422448)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.35-42, 2010-06-25 (Released:2017-01-06)
参考文献数
15
被引用文献数
12

1. 宮崎県東諸県郡綾町川中の照葉原生林において,シカの採食による顕著な被害が発生する以前の1988年当時の植生調査資料と激しい被害を受けている2009年現在の植生調査資料とを比較し,照葉原生林の階層構造,種多様性,種組成へのシカの採食の影響を調査した.  2. 階層構造についてはシカの採食によって,第2低木層と草本層の平均植被率がそれぞれ約1/2,1/5に大きく減少した.  3. 階層別の種多様性については全階層と第2低木層において平均照葉樹林構成種数がそれぞれ約3/4,1/2に大きく減少した.  4. 生活形別の種多様性については照葉高木,照葉低木,照葉つる植物,多年生草本において平均種数がそれぞれ2.4種,3.8種,1.2種,2.4種減少した.  5. 減少種数は25種,消失種数は35種,増加種数は6種,新入種数は33種となり種組成は変化した.  6. 他地域から報告されている不嗜好性植物と比較した結果,増加種のうちバリバリノキ,マンリョウ,マムシグサなどの12種が本調査地の不嗜好性植物と認められた.  7. 本調査地の照葉原生林の階層構造,種多様性,種組成はともにシカの採食によって大きな被害を受けており,照葉原生林の保全対策が望まれる.
著者
藤木 大介 中條 和光
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.252-269, 2005 (Released:2009-10-16)
参考文献数
37
被引用文献数
2

This study investigated the forming process of the sentence semantic representation. Fujiki and Chujo (2005) consider it the integration process of schemata. Their model assumed that the integration occurred when encountering syntactic head words of phrases, and that the schemata of the constituents except the head were integrated into the head schema. However, their model could explain only two types of integration, so this study extended the model including the process of comparison and alignment for schemata. To test the validity of this extended model, we compared sentences including acceptable noun phrases with sentences including unacceptable noun phrase. As the result of the measuring the reading time of those noun phrases and judgment time of the acceptability of those sentences, the semantic processes of these sentences changed depending on the load of sentence processing. We proposed that the model would change its behavior as the amount of the available resources changed
著者
藤木 大介
出版者
The Japanese Psychonomic Society
雑誌
基礎心理学研究 (ISSN:02877651)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.43-44, 2002-09-30 (Released:2016-11-18)

This study investigated comprehension processes of Japanese sentences which included an adjective-noun phrase. Specifically, we examined whether evaluation of a consistent semantic relation between an adjective and a noun in a sentence of reading material was suspended until the argument structure of the sentence was constructed. Twenty-three participants read two types of sentences: acceptable sentences that contained a plausible adjective-noun phrase, and unacceptable sentences that contained an implausible adjective-noun phrase. In comparison with the acceptable sentences, phrase-by-phrase reading time for the unacceptable sentences was prolonged not only at the position of adjective-noun phrase but also at the position of the verb that constructed the propositional representation of the sentence. This result suggests that evaluation of a semantic relation of an adjective-noun phrase is postponed until the coherent argument structure is constructed.
著者
藤木 大介
出版者
日本森林学会
巻号頁・発行日
pp.458, 2013 (Released:2013-08-20)

兵庫県本州部のコナラ林約200林分を対象に2005年~2012年の8年間、目視によりコナラ堅果の豊凶を観測した。その結果、コナラ堅果の結実には県域スケールで年次的な豊凶があることが確認された。一方で、豊凶の同調性の強さは地域的な差異があり、兵庫県内でも同調性が強い地域と弱い地域があることが示唆された。発表では、これらに加え、豊凶に影響する気象要因についてアメダス・データを用いた解析結果についても示したい。
著者
藤木 大介 堀井 順平 二宮 由樹 外尾 恵美子
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.41, no.Suppl., pp.117-120, 2018-03-01 (Released:2018-03-01)
参考文献数
10

集中力は学習において重要な役割を果たす.これまでも課題遂行中の思考状態がそのパフォーマンスに影響することが示されてきた.一方,自己の注意能力について正確に評価できる場合,不注意,多動,衝動的等注意に問題があっても選択的注意課題に優れることも示されている.このことから,集中力の劣る者でもそれを自覚化させた場合,補償的に思考状態を変化させ,課題成績が高くなる可能性がある.そこで持続的注意に関する検査の結果をフィードバックすることが思考状態や読解成績に影響を及ぼすか検討した結果,課題そのものではないが課題に関連する思考が増え,特に持続的注意の劣る参加者は読解成績が向上することが示された.
著者
藤木 大介 中條 和光
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.9-23, 2005-03-31 (Released:2010-10-27)
参考文献数
34
被引用文献数
3 1

文の意味表象は,句の主要部以外の構成素のスキーマと主要部スキーマとの統合を繰り返すことによって形成される複合概念であると考えることができる.本研究では,構成素スキーマと,それを主要部スキーマのスロットに統合するための条件との間の整合性の照合を伴う文理解のモデルを提案した.もしその条件が満たされないならば,スロットの選択制限は理解者の世界知識と無矛盾となるように拡張され,再びその整合性が照合される.このモデルに従うと,名詞句の読み時間と文容認可能性判断課題に要する反応時間は照合の回数を反映するはずである.読み時間(実験1)と文容認可能性判断課題の反応時間(実験1,2)を,典型名詞句を伴う文と,これよりも多くの照合回数を必要とする非典型名詞句を伴う文とで比較した.2つの実験において,読み時間と反応時間とが典型名詞句文よりも非典型名詞句文で長くなった.これらの結果はモデルからの予測と一致したものであった.
著者
藤木 大介 若杉 佳彦 楞野 祥子 岩本 理沙 島田 英昭
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.88, no.4, pp.390-395, 2017

<p>When reading narratives, readers infer the emotions of characters and empathize with them. Emphathic responses can be parallel or reactive. This study, based on the dual-process theory, investigated which emotional responses (i.e., emotion inference, parallel response, or reactive response) in reading are caused by system 1 (unconscious, implicit, automatic, low-effort process) and which depend on system 2 (conscious, explicit, controlled, high-effort process). As cognitive load affects responses influenced by system 2, the effects of working memory load on reading were examined. Participants were divided into two groups based on working memory capacity, and instructed to read narratives under a dual-tasks situation similar to the reading span test. The results revealed no effect of cognitive load on inference of characters' emotions. However, additional load did affect both types of empathic responses in the low-capacity group. Further, when cognitive load was low, emotion inference correlated with both empathic responses. These results indicate that emotion inference is an automatic process, whereas empathic responses are controlled processes.</p>
著者
藤木 大介 上田 博唯 近間 正樹
出版者
日本ロボット学会
雑誌
日本ロボット学会誌 (ISSN:02891824)
巻号頁・発行日
vol.26, no.5, pp.445-452, 2008-07-15 (Released:2010-08-25)
参考文献数
29

Home service robots must have implements like conversation interfaces so it can be easily accepted by the users. To get basic data to develop such a robot, we investigated the robot's impressions of when it responded to the instructions of operating a TV or when it planning the cooking recipes. Thirty men and thirty women of different age groups rated the impression on using the robot. The results indicated that we should find a better way to inform to the user when a word was not in the robot's database. Moreover, we should reconsider what kind of the robot's gesture the users need. In addition, the embodiment of the robot made the impressions better. In addition, women judged the robot positively probably because the robot had a cute appearance.
著者
藤木 大介
出版者
日本読書学会
雑誌
読書科学 (ISSN:0387284X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.72-79, 2017-05-22 (Released:2017-06-08)
参考文献数
13

Some readers are unable to accurately comprehend texts and tend to distort the meaning based on social or moral desirability. To investigate the characteristics of readers who avoid reading based on moral schema, this study administered the Reader Belief Questionnaire, a critical thinking disposition scale, and a task in which participants had to evaluate the appropriateness of concluding sentences in the following situations: (1) appropriate sentences which were derived from the earlier context, (2) inappropriate sentences, and (3) morally biased sentences. The results of the experiment indicated that readers who scored high on the “inquiry mind” factor of the critical thinking scale and had a critical thinking disposition could distinguish appropriate conclusions from the moral biased ones. This indicates that an inquisitive mind with the desire for a wider variety of information affects the process of evaluating information while deriving conclusions, and encourages unbiased and appropriate reading.
著者
石田 弘明 服部 保 小舘 誓治 黒田 有寿茂 澤田 佳宏 松村 俊和 藤木 大介
出版者
日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.137-150, 2008-11-30
被引用文献数
2

シカが高密度に生息する地域の森林伐採跡地では、伐採後に再生した植生がシカの採食によって退行し、その結果伐採跡地が裸地化するという問題が発生している。一方、シカの不嗜好性植物の中には、イワヒメワラビのようにシカの強度採食下にある森林伐採跡地で大規模な群落を形成するものがある。このような不嗜好性植物群落は伐採跡地の土壌流亡や植物種多様性の減少を抑制している可能性がある。不嗜好性植物を伐採跡地の緑化に利用することができれば、シカの高密度生息地域における伐採跡地の土壌保全と種多様性保全を同時に進めることができるかもしれない。本研究では、イワヒメワラビによる緑化の有効性を評価するために、兵庫県淡路島の最南部に位置する諭鶴羽山系においてイワヒメワラビ群落の土壌保全効果と種多様性保全効果を調査した。イワヒメワラビ群落(伐採跡地および牧場跡地)、裸地群落(伐採跡地および牧場跡地)、二次林(ウバメガシ林、ヤブニッケイ林)のそれぞれに5m×5mの調査区を複数設置し(合計93区)、調査区ごとに植生調査と土壌調査を行った。その結果、イワヒメワラビ群落では二次林と同様の土壌が維持されていたが、裸地群落では明らかな土壌流亡が観察された。また、イワヒメワラビ群落では、イワヒメワラビの地下茎の作用によって表層土壌が柔らかくなる傾向がみられた。これらのことは、イワヒメワラビ群落の土壌保全効果が高いことを示している。伐採跡地のイワヒメワラビ群落では調査区あたりの森林生種数の割合が最も大きく、その種数は二次林の種数を上回っていた。また、種組成を群落間で比較したところ、伐採跡地のイワヒメワラビ群落には二次林の構成種の大半が出現していた。これらのことから、イワヒメワラビ群落の種多様性保全効果、特に森林生種の多様性を保全する効果は高いと考えられる。従って、イワヒメワラビを用いた伐採跡地の緑化は有効であるといえる。ただし、場合によっては柵工や枠工などの緑化補助工を併用する必要がある。また、伐採跡地の森林再生を図るためにはシカの個体数管理や防鹿柵の設置が必要である。