著者
村井 貞子 稲積 温子 金子 義徳 奥田 六郎 田中 陸男 川崎 富作
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.227-239, 1982

溶連菌保菌者と臨床的あるいは細菌学的に溶連菌感染症と確認された症例について, Bactericidal testによるM抗体と凝集反応によるT抗体とを比較した.結果は以下のとおりであった.<BR>1) 1, 4, 6型について観察された範囲では保菌菌型とT抗体には強い関連性が見られた.<BR>2) 急性糸球体腎炎患者54例について観察されたT抗体とM抗体については, T12抗体陽性7例中6例がM12抗体強陽性であり, T12抗体陽性がM抗体の存在を示す良い指標となりうることを示してい九一方, T抗体陰性は必ずしもM抗体陰性を意味するものではなかった.<BR>3) 感染菌型に相当するT抗体は, 猩紅熱, 咽頭炎の溶連菌一次症では発病後3週頃より検出し得た.<BR>4) リウマチ熱や急性糸球体腎炎の溶連菌二次症の場合にはT抗体の陽性率は, 猩紅熱あるいは咽頭炎のような急性感染に比較して高く, 多様なT抗体パターンを示す症例の多いことが認められた.<BR>5) インドネシア・東ジャ鳴の住民のT抗体パターンは日本のパターンと著しく異なり, 日本と眼なる菌型のA群溶連菌の浸淫を示唆していた.