著者
藤田 晃三 吉河 道人 室野 晃一 村井 貞子 岸下 雅通 山崎 伸二 竹田 美文
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.68, no.10, pp.1229-1236, 1994
被引用文献数
3

1981~90年に分離されたA群溶連菌670株について, 患者の背景と分離菌の性状を調べた.<BR>感染症の内訳は咽頭炎479, 狸紅熱133, 化膿性疾患35, 非化膿性合併症23で, 分離材料は咽頭スワブ655, 皮膚スワブや膿など15であった.発疹症を含めた咽頭炎の再燃は5.3%, 再発は13.4%の症例に認め, 再発エピソードの15.7%は同一のM血清型株によるものであった.発疹症に2回罹患した6例は, 2回目それぞれ前回と異なるM血清型株に感染し, その中4例は新たな型の毒素を産生する株に感染した.<BR>M血清型とT血清型の一致率は73.3%(同じT血清型を含む混合型まで入れると83.0%) であった.全体ではM12, 4, 1, 3, 28型の順に多く, M12, 4型が主流であったが, 年度によっては1, 3, 28型株の分離頻度が最も高かった.<BR>ペニシリン・セファロスポリン耐性株は認めず, erthromycin耐性株の分離率は1981年26.5%, 1982年18.4%であったが, 1983年以後激減し1986年以降0に近い.Chloramphenicol耐性もerythromycin耐性と同様で, tetracycline耐性株の分離率は60%から20%以下に年を追って減少した.
著者
村井 貞子 稲積 温子 金子 義徳 奥田 六郎 田中 陸男 川崎 富作
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.227-239, 1982

溶連菌保菌者と臨床的あるいは細菌学的に溶連菌感染症と確認された症例について, Bactericidal testによるM抗体と凝集反応によるT抗体とを比較した.結果は以下のとおりであった.<BR>1) 1, 4, 6型について観察された範囲では保菌菌型とT抗体には強い関連性が見られた.<BR>2) 急性糸球体腎炎患者54例について観察されたT抗体とM抗体については, T12抗体陽性7例中6例がM12抗体強陽性であり, T12抗体陽性がM抗体の存在を示す良い指標となりうることを示してい九一方, T抗体陰性は必ずしもM抗体陰性を意味するものではなかった.<BR>3) 感染菌型に相当するT抗体は, 猩紅熱, 咽頭炎の溶連菌一次症では発病後3週頃より検出し得た.<BR>4) リウマチ熱や急性糸球体腎炎の溶連菌二次症の場合にはT抗体の陽性率は, 猩紅熱あるいは咽頭炎のような急性感染に比較して高く, 多様なT抗体パターンを示す症例の多いことが認められた.<BR>5) インドネシア・東ジャ鳴の住民のT抗体パターンは日本のパターンと著しく異なり, 日本と眼なる菌型のA群溶連菌の浸淫を示唆していた.
著者
李 秀華 五島 瑳智子 村井 貞子 小林 明子 辻 明良 高 細水 胡 尭蒙 〓 玉秀
出版者
Japanese Society of Chemotherapy
雑誌
日本化学療法学会雜誌 = Japanese journal of chemotherapy (ISSN:13407007)
巻号頁・発行日
vol.47, no.10, pp.611-618, 1999-10-25

中国の病院関係者における<I>Staphyloococcus auresus</I>の保菌状況を調べることを目的とし, 1996年, 1997年に中国4省4都市7病院で, 健康者25人と入院患者25人を対象に咽頭と鼻前庭粘膜から<I>S. aureus</I>を分離した。分離株の血清型別および薬剤感受性を調べ, 1996年に行った東京の1病院の成績と比較した。<BR>1) 中国7病院での<I>S. aureus</I>の分離率は4%~25%であり, 東京の1病院での41.2%に比べ有意に低率であった。<BR>2) 健康者からの<I>S. aureus</I>の分離率は入院患者よりも高く, 健康者では医療従事者の方が一般人に比較し高い分離率を示した。また, 咽頭からの分離率が鼻前庭に比較して高かった。<BR>3) 中国7病院で分離された<I>S. aureus</I>の血清型はコアグラーゼVII型がもっとも多く, エンテロトキシン型は一定ではなかった。これに対して日本の1病院から分離された<I>S. aureus</I>42株のうち12株がコアグラーII型, エンテロトキシンC型であり, これらはすべてMRSAであった。<BR>4) 抗菌薬感受性について, 中国7病院での分離株はimipenem, panipenemに対する感受性が高く, tetracycline, erythromycin, roxithromycin, azithromycin には低い成績を示したが, MRSAは分離されなかった。一方, 東京の1病院では42株中17株 (40.8%) がMRSAであったが, すぺての菌株がarbekacinに4.0μg/mL以下, vanoomycinに2.0μg/mL以下のMICを示した。<BR>中国7病院と東京の1病院で分離された<I>S. aureus</I>の各種抗菌薬に対する感受性パターンの相違は, これまでの両国における感染症と治療法の差および医療体制の違いによるものと考えられるが, 西洋医学が急速に導入されている中国において, 今後の薬剤耐性菌の推移を検討する基礎資料となるであろう。