著者
田中 隆充 TANAKA Takamitsu
出版者
岩手大学教育学部
雑誌
岩手大学教育学部研究年報 (ISSN:03677370)
巻号頁・発行日
vol.69, pp.111-116, 2009

日本の伝統工芸のほとんどはエンドユーザー自身で組み立てることが出来ないため、職人が組上げた完成された製品の状態で輸送している。特に伝統的な形状である階段箪笥は輸送時における無駄なスペースが多いことと、家具そのものを保護するための梱包に多くの時間と費用を要している。結果的に特に海外輸出においては輸送コストがあがり、販売価格が高くなり販路拡大が難しくなっている。輸送コストが最も安い方法はエンドユーザーが機内に持込み運搬することであるが、本開発は機内に持込が可能な寸法と重量を目標とし、よりコンパクトな組立式の家具を目指した。また、前述の目的を達成するには木材と木材を容易に接合できる部品の開発も必要である。したがって、従来の階段箪笥の様相を保持しながらエンドユーザーが簡単に組立てられるキットを制作するには接合部品が不可欠であり、2007年度は主に接合部品の試作を行った。そして、2008年度においてはその接合部品の構造を基軸に組み立て式の階段箪笥の試作を行った。尚、本開発は岩手県の伝統工芸である岩谷堂箪笥の技術を用い、2005年度から始めた産学共同研究、およびJST のシーズ発掘試験の成果を基軸に開発した(注1 ~注3, 注8)。
著者
田中 隆充 王 懿敏 阿部 裕之
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第67回春季研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.102, 2020 (Released:2020-08-27)

本稿は,岩手県の伝統的工芸である南部鉄器の鉄瓶の輸出用の造形について示したものである.近年,南部鉄瓶は海外での需要が高まり,従来の南部鉄瓶の典型的な造形や表面にデコレーションされる文様(多くはアラレ模様),色彩のバリエーションが増えた.国や地域によって鉄瓶の使い方や上述のデザインの好みの差異があるため,マーケタによってデザイン条件が示される.しかし,南部鉄瓶は工芸職人が一人でデザインを行い,手づくりで制作する場合もあれば,制作過程毎に分業化され機械を主体とした量産用の制作の2つのカテゴリに分けられる.南部鉄瓶を専門としたデザイナはほとんど皆無であるため,量産に適さない造形を見極めるのが難しい.本研究ではデザインプロセスの川上に位置する,発散的な造形のバリエーションをデザインし,その後,工芸の専門家に一品物の鉄瓶に適しているのか,または,量産性のある造形であるかを確認,整理し考察を行った.整理をすることで,多くのデザインバリエーションから量産できるデザインの要素と量産可能な造形の可能性を知ることできると考えた.そして,目標に対して的を射たデザインを提案できると推察する.
著者
高山 詩穂子 田中 隆充
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.60, 2013

筆者は、ビニールやレジンなど透ける素材によって有機物を保存した作品を制作してきた。同様の素材を使用した先行研究として深堀隆介とダミアン・ハーストの作品を取り上げている。レジンは無色透明であるため人に見せられない部分を作ってはならない。そのため本稿で示す制作で特に留意したのが内容物の配置である。こうした視点から日常よく使用する製品について考えてみると、入れ物、つまりカバーや裏側、底が大きな役割を果たしていることに気付いた。デザインとは問題を解決するための手段であり、本研究ではカバーによって隠されてしまった本質的な問題を創作活動から発見し、可視化することで、デザイン行為を解決することが今後の課題であると考えている。
著者
孔 鎭烈 田中 隆充
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.3_1-3_10, 2020-01-31 (Released:2020-02-25)
参考文献数
10

本稿は,菓子等のパッケージに多く用いられる「帯紙」のプロポーションの好みについて,実験を行いその結果を検証し評価した.上述の帯紙は掛け紙とも呼ばれ,商品(箱)全体を包むことができる大きいサイズから紐のような小さいサイズまで様々であり,視覚的概念表現の規定はない.多くは,作り手,売り手が買い手の好みを体験的,感覚的に決めており,上述の帯紙に関して買い手の好みを学術的な側面からアプローチしている研究はない.本研究では,10 種類のアスペクト比のサイズの箱に帯紙を貼付しそのアスペクト比を用いて実験し,検証の結果,被験者の感覚的反応による視覚的対象の数的規則性を求めることができた.多くの被験者はパッケージの箱と見立てた平面状の長方形(以後設定条件と言う)に対して帯紙の割合が60%〜70%を占めるプロポーションが最も好むプロポーションであることが分かった.その反面,設定条件に対して帯紙の幅が細いプロポーションには好みが低くい結果になった.菓子等のパッケージで用いられる帯紙は買い手に対し視覚的効果が大きいため,そのサイズの効果を応用することで,今後のパッケージングデザインの考え方の一助になると考える.
著者
田中 隆充
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究. 研究発表大会概要集 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
no.56, pp.154-155, 2009-06-20

地域には観光ガイドブックやインターネットの情報等にはない、地元の人にしか分からない由来や体 的な歴史がある。それらの情報は現場にいかなければ分からないことや住んでいなければ分からない情報も多々ある。これらの情報は本来、代々伝えていくことが重要であるが、これらをアーカイブ化し、共有することも大切な要素と考えた。また、その情報の貴重性を伝えるために、情報の演出の仕方を考える必要がある。そこで、その場にいてその場の過去の映像や音声を体感することで、その地域の特色や本質的な歴史観を見いだすことができるのではないかと考えた。そこで、それらを具体的に示す方法の一つとして、携帯電話のQRコード読み取り機能を用いて、使い手がインターネットに手軽にアクセスし、そこから過去の画像等を携帯電話側に読み込ませることで、携帯電話の画面やイヤホンから表示できるコンテンツを実 的に制作した。本研究においては岩手大学構内に 力所のQRコードパネルを2006年度から2007年度の 年間に設置し基礎的な実 を行った。そして、2008年度は国立公園に指定されている岩手県浄土ケ浜に設置することで、観光の最前線での試みを行い始めた。