著者
望月 利男 宮野 道雄 四戸 英雄 田代 侃
出版者
東京都立大学都市研究センター
雑誌
総合都市研究 (ISSN:03863506)
巻号頁・発行日
no.11, pp.39-46, 1980-12

1978年6月12日に宮城県沖に生じたマグニチュード7.4の地震は,宮城県並びにその周辺に少なからぬ被害を与えた。この地震の被害の特徴は,仙台市を中心とする都市型地震災害といわれ,多面的な被害調査がなされたが,この報告は,震死者の筆頭原因をなしたブロック塀の被害実態を主として仙台市において調査したものである。この地震により宮城県では27名の死者を生じたが (この他福島県で1名: 石塀倒壊による) ,そのうち13名は仙台市での発生であり,7名がブロック塀倒壊の犠牲となっている (宮城県全体では10名)。これに対し家屋倒壊による死者は5名であるから,比較的古い地震の人的被害の発生状況に比べ,その原因がかなり変質してきていることを推測させる。すなわち,かつての大地震において家屋倒壊による震死者数 (あるいはそれに伴う類焼死)が圧倒的に多く,その他の原因によるものは相対的に著しく低かったと考えられる。例えば,門柱・石塀の倒壊による死者も7名 (28名のうち)生じており,これだけでも家屋倒壊による死者数を越えるが,これらの構造物はかなり古くから存在していたはずである。筆者らは人的被害に及ぼす影響という観点から,構造物としては従来軽視されてきた (しかし使用量は極めて多い)ブロック塀について,その被害実態を調査し,その地震時危険度を検討した。調査地域は各種被害が多発した仙台市であり (一部泉市を含む),その倒壊率等と地形 (地盤)・震度との関係,残存プロック塀について検討することにより我が国各地の既存ブロック塀の地震時危険度と対策を考究するための基礎資料を得ること並びに今後,施工されるこの種の塀の安全性の確保のためのデータを提供すべく,この調査を実施した。