著者
田口 和三 木村 聡
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.57-62, 2002-02-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
10

オボムコイドは分子量28, 000の卵白に含まれる耐熱性蛋白である.オボムコイド特異的IgEの抗体価測定は, 加熱鶏卵摂取の可否判定に有用とされるが, その陽性率に関する具体的な統計は少ない.そこで我々は検査室に集まる検体を用いて陽性率や関連抗原との相関について検討した.対象には食物アレルギーのアレルゲン検査として, 各診療科より2001年1月から10月に検査センターに検査依頼のあった1778例を用いた.オボムコイド特異的IgE抗体陽性例は724例 (40.7%) であった.年齢別変動では2歳で陽性率がもっとも高く (46.0%) , 以降加齢とともに低下した.また, 健常人50例では, クラス1の抗体価1例であったのみで, クラス2以上の陽性率は0%であった.他の食餌性アレルゲンとの関係では, 卵白で最も高い相関性が認められ (r=0.869) , 以下卵黄 (r=0.861) , ミルク (r=0.574) の順であり, 抗原性の近いアレルゲンで相関性が高かった.また, 卵白とオボムコイドを同時に測定した症例では, 卵白が陽性でオボムコイドが陰性の症例は899例中236例 (26.3%) に認められた.これに対し, オボムコイド陽性, 卵白陰性の検体は687例中24例 (3.5%) にすぎなかった.この結果より, 卵白アレルギーの患者の約4分の1で加熱鶏卵ならば摂取が可能であることが推定された.以上のことから, 卵白, オボムコイドの陽性率には差がみとめられ, アレルギー患者食事指導を行う上で特異的IgE抗体の測定は有効な一指標となり得る可能性が示唆された.