著者
山崎 剛 田口 文明 近藤 純正
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.71-77, 1994-02-28
被引用文献数
18

積雪のある森林小流域(山形県釜淵)における熱収支を評価した.融雪モデルと流出モデルを組み合わせ,融雪過程と流出過程を再現した.その際,森林内の積雪直上の放射条件に対する植被の影響を考慮した.また,森林小流域を巨視的に,それぞれ一層の植被層と積雪層からなる系と考えることによって,森林から大気への顕熱フラックスを見積もった.その結果,枝葉上に雪がなければ真冬の2月下旬でも40〜60Wm^<-2>の顕熱フラックスが大気へ供給され,大気は加熱されることがわかった.さらに熱収支の様子が,植被の有無によってどのように変わるかについても調べた.
著者
西井 和晃 田口 文明 中村 尚
出版者
Meteorological Society of Japan
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.98, no.4, pp.801-820, 2020 (Released:2020-08-26)
参考文献数
32
被引用文献数
8

2018年7月に日本において2つの極端現象が発生した。本研究では大気大循環モデル(AGCM)のアンサンブル実験にもとづき、これらをもたらした大気大循環偏差に対する海面水温偏差の潜在的影響を評価した。一つ目の極端現象は、7月上旬での西日本を中心とする豪雨であり、日本の南西にあった低気圧性偏差と日本の東にあった高気圧性偏差による顕著な水蒸気輸送がこの主要因である。全球で観測された海面水温を与えたAGCM実験は日本の東の高気圧性偏差を再現できず、このため水蒸気輸送と豪雨を再現できなかった。もう一つの極端現象は7月中下旬に日本で全国的に観測された猛暑であり、これは日本を覆う顕著な高気圧性偏差によるものである。この高気圧性偏差はAGCM実験によって高温偏差とともによく再現された。さらなる実験により、熱帯と中緯度北太平洋のそれぞれの海面水温偏差が、猛暑をもたらした北西太平洋上の大気循環の主要モードを強制していた可能性が示された。また、6月から7月にかけて持続した北西太平洋での亜熱帯ジェットの北偏傾向、及び、北半球中緯度対流圏での高温偏差傾向も、これらの海面水温偏差がそれぞれ強制していた可能性を示した。