著者
桜井 弘 今倉 康宏 田和 理市
出版者
京都薬科大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1992

前年の成果を踏まえて、本年度は、ポドフィロトキシン関連化合物として、シリンガ酸(SA)およびデメチルエピポドフィロトキシン(DEPD)の選び、これらの銅(II)錯体によるDNA切断反応を検討した。まず、アガロースゲル電気泳動法によりM13mp18ssDNAを用いて、銅錯体によるDNA切断反応が生ずること、及び銅(II)単独又は薬物単独ではDNA切断は生じないことを確認した。次に、同じ系によりポリアクリルアミドゲル電気泳動を用いてシークエンス反応をおこなった。その結果、SAーおよびDEPDー銅錯体によりDNA切断反応は塩基特異的に生じていること見い出した。すなわち、同系によるDNA切断反応は、シトシン(C)部位で切断が優先的に生じていることが明かとなった。また、チミン(T)やグアニン(G)部位においても切断が見られたが、C部位と比較するとその程度は低かった。アデニン(A)部位ではDNA切断はほとんど生じていないことが判った。次に、ポドフィロトキシンに鉄(III)を共存させ、紫外線照射を行うとDNA切断反応が増大し、かつ反応中に・OHの生成が認められるため、本反応における酸化生成物の同定を試みた。反応を行った後、薄層クロマトグラフィー及び液体クロマトグラフィーにより化合物を分離精製し、NMRを用いて構造解析を試みたところ、現在、4種の化合物を同定することができた。しかし、まだ十分量を得ることが困難であるため、詳細な物性やDNA切断反応を行っていない。この検討を続け、十分量得ること、さらに未同定の化合物の構造決定を行いたいと考えている。これらの知見により、詳細な紫外線照射下における活性酸素生成に関する考察を行うことを計画している。