著者
中尾 容子 深城 英弘 田坂 昌生
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集 第45回日本植物生理学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.049, 2004-03-27 (Released:2005-03-15)

シロイヌナズナsolitary-root(slr)変異体は、側根形成が全く起こらない。この変異はオーキシン誘導性遺伝子Aux/IAAファミリーIAA14の機能獲得変異である。本来オーキシンにより不安定になるIAA14タンパク質はslr変異により安定化する。その結果、オーキシン応答性転写調節因子ARFsの機能を恒常的に抑制し、そのために側根形成や根毛形成、根や胚軸の重力屈性反応を阻害していると考えられる。そこで、組織特異的なオーキシン応答と根の形態形成の関係を明らかにする目的で、変異型IAA14(mIAA14)タンパク質とGRとの融合タンパク質(mIAA14-GR)を組織特異的に発現する形質転換体を作出した。mIAA14-GR融合タンパク質をIAA14プロモータ-で発現させた植物体では、Dex処理により主根がslr変異型の表現型を示した。このことから、mIAA14-GRはこの誘導系において機能することが確認された。そこでmIAA14-GRを根の中心柱特異的プロモーター(SHOOT-ROOT )で発現させたところ、側根形成が著しく抑制された。それに対して、側根原基形成時に特定の細胞で発現するSCARECROW遺伝子のプロモーターでmIAA14-GRを発現させたところ、異常な構造を持つ側根原基が形成された。これらの結果から、オーキシン応答が側根形成開始時には中心柱で重要であり、さらに側根原基形成過程においても原基内部で重要である事が示された。