著者
森口 亮 金浜 耕基 金山 喜則
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集 第45回日本植物生理学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.589, 2004-03-27 (Released:2005-03-15)

テロメアは染色体末端領域のことであり、染色体の安定的な維持に必須である。本研究ではテロメア長の制御機構を明らかにすることを目的として、まず永年生植物であるリンゴ・サクラを用い、植物個体内の齢に沿ったテロメア長の測定を行った。その結果、テロメア長は各部位間で一定の範囲内に保たれ、少なくとも20年間に渡る細胞分裂を経てもテロメア長は変化しないことが示された。このことより、細胞分裂に伴ってテロメア長が減少する動物と異なり、植物では厳密なテロメア長制御機構の存在が考えられた。 続いて、モデル園芸作物であるトマトを用い、テロメア長の制御に関わると考えられるテロメア結合タンパク質(TBP)のクローニングを行った。まず、トマトESTにおいてアラビドプシス、イネのTBPと相同性の高い配列を参考にして全翻訳領域を含むcDNAの単離を行った。この推定トマトTBP(LeTBP)は689アミノ酸から成り、C末端領域にMyb型DNA結合モチーフが確認できた。またLeTBP遺伝子はシングルコピーで存在し、解析に用いた全ての器官において発現がみられた。次に、Myb型DNA結合モチーフを含む部分タンパク質を大腸菌で発現させ、ゲルシフト解析に用い結果、LeTBPは2本鎖テロメア配列に特異的に結合するTBPであることが示された。
著者
渡辺 雄一郎 栗原 志夫 霧生 尚志
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集 第45回日本植物生理学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.S011, 2004-03-27 (Released:2005-03-15)

植物にウイルスが感染すると、同類のウイルスによる再感染から免れることが知られている。われわれはシロイヌナズナ-TMV Cgの系をもちいて、この干渉作用と呼ばれる分子基盤を解析している。まずTMV-CgからYDと名付けた人工弱毒ウイルスを作成した。このYDは増殖量は少ないがちゃんと全身感染し、無病徴で成長に影響を与えない。この状態に強毒TMV Cgが2次感染してもまったく受け付けない。病徴がでないのみならず、RT-PCRによる検出でもその2次感染は検出できない。干渉作用はRNAの配列レベルでの類似性に依存して起こる状況からposttranscriptional gene silencing (PTGS) 現象との類似性が示唆されてきた。しかし、いくつかのPTGSに関与することがしられた遺伝子の変異体シロイヌナズナでもこの干渉作用が観察されることから、PTGSとの相違点が明らかとなった。シロイヌナズナでは種々のmiRNAが合成され、通常の発生制御などに関わることが示唆されてきた。われわれはCgとYDが感染したシロイヌナズナにおいてmiRNAの量に変動があるのかを調べた。その結果、多くのmiRNAがCgの感染によってその蓄積が上昇することがわかった。それに対してYDが感染したアラビドプシスではmiRNA量に変動は見られず、miRNAの量の変動と病徴発現との関連が強く示唆された。
著者
中尾 容子 深城 英弘 田坂 昌生
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集 第45回日本植物生理学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.049, 2004-03-27 (Released:2005-03-15)

シロイヌナズナsolitary-root(slr)変異体は、側根形成が全く起こらない。この変異はオーキシン誘導性遺伝子Aux/IAAファミリーIAA14の機能獲得変異である。本来オーキシンにより不安定になるIAA14タンパク質はslr変異により安定化する。その結果、オーキシン応答性転写調節因子ARFsの機能を恒常的に抑制し、そのために側根形成や根毛形成、根や胚軸の重力屈性反応を阻害していると考えられる。そこで、組織特異的なオーキシン応答と根の形態形成の関係を明らかにする目的で、変異型IAA14(mIAA14)タンパク質とGRとの融合タンパク質(mIAA14-GR)を組織特異的に発現する形質転換体を作出した。mIAA14-GR融合タンパク質をIAA14プロモータ-で発現させた植物体では、Dex処理により主根がslr変異型の表現型を示した。このことから、mIAA14-GRはこの誘導系において機能することが確認された。そこでmIAA14-GRを根の中心柱特異的プロモーター(SHOOT-ROOT )で発現させたところ、側根形成が著しく抑制された。それに対して、側根原基形成時に特定の細胞で発現するSCARECROW遺伝子のプロモーターでmIAA14-GRを発現させたところ、異常な構造を持つ側根原基が形成された。これらの結果から、オーキシン応答が側根形成開始時には中心柱で重要であり、さらに側根原基形成過程においても原基内部で重要である事が示された。