著者
田子 博 今井 克江 大谷 仁己 嶋田 好孝
出版者
公益社団法人大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.339-346, 2003-09-10
被引用文献数
5

三宅島からの火山ガスが群馬県山岳部の霧水に与える影響を見るために,赤城山において霧水の採取および分析を行った。三宅島からの火山ガス放出量が急激に増大した2000年9月以降,霧水中の硫酸イオン濃度が増加し,pHおよびNO_3^-/nss-SO_4^<2->(N/S)が低下した。また,これまでに観測されたことのなかったNO_3^-/nss-Cl^-が1以下となる霧が7回観測されたが,この場合必ずN/Sの大幅な低下を伴っていた。これは,火山ガスの主成分である二酸化硫黄と塩化水素が同時に取り込まれたと考えられ,特に2000年9月14日にはほとんどが硫酸と塩酸で構成された特異的な霧水(pH 2.99)が観測された。このときの霧水中のN/Sは0.07と極めて低かった。このような特異的成分を持つ霧が観測された時期には,地上における二酸化硫黄濃度の実測値あるいは広域拡散シミュレーションの計算結果からも群馬県内に高濃度の二酸化硫黄が移流してきたことが確認されており,三宅島からの火山ガスが赤城山の霧水中の硫化イオンを増大させ,pHを低下させたことがわかった。
著者
熊谷 貴美代 田子 博 飯島 明宏 小澤 邦壽 坂本 和彦
出版者
公益社団法人 大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.10-20, 2010-01-10 (Released:2010-07-29)
参考文献数
40
被引用文献数
5

関東平野の内陸に位置する群馬県前橋市および赤城山において,大気中粒子状物質を粒径別(<2.1μm,2.1-11 μm,> 11 μm)に捕集し,無機イオン成分,炭素成分分析を行った。炭素成分分析では,熱分離法と熱光学補正法の比較により補正を行った。微小粒子濃度の年平均値は,前橋で20.2~22.7 μg/m3,赤城で8.2~10.5 μg/m3であった。微小粒子濃度は春から夏にかけて高濃度となる季節変動を示した。微小粒子における無機イオン成分の96%は,NO3-,SO42-,NH4+であった。前橋も赤城も粒子濃度は同様の変動パターンを示した。前橋では春にNO3-が大きく増加するという特徴が見られた。しかしNO3-は赤城では低濃度であったことから,前橋におけるNH3ガスがNO3-粒子生成に影響していると示唆された。SO42-は夏に高濃度となる変動を示した。赤城でも前橋の8割程度のSO42-が観測され,SO42-粒子は広域的に存在することが分かった。マスクロージャーモデルを用いて,成分濃度から粒子質量濃度を推定した結果,実測値と同等の結果が得られた。モデル推定値から,粒子濃度の成分構成を季節毎に求めたところ,二次生成粒子と有機物が微小粒子の8割を占めると推定された。ECの寄与率は1割程度であった。春は,NO3-,SO42-粒子,夏秋はSO42-と有機物の寄与率が大きいことが分かった。