著者
田尻 由起 柘植 雅義
出版者
障害科学学会
雑誌
障害科学研究 (ISSN:18815812)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.117-128, 2021-03-31 (Released:2021-09-30)
参考文献数
21

パリ在住邦人家庭の障害乳幼児の子育ての実態と支援課題を明らかにするために、6名の母親に対し半構造化面接を行った。インタビューを分析した結果、【フランスでの子育てに関する肯定的な捉え】、【フランスでの子育てに対する不安・戸惑い・困り感】、【言語・文化的障壁による情報収集・利用の制限】、【パリに住む邦人家庭障害乳幼児親子の子育て支援ニーズ】の4つのカテゴリーが示された。母親はパリでの子育てを肯定的に捉えつつも子育てに関する社会的資源については不安や戸惑いを感じていた。また支援ニーズとして言語的な支援の必要性、日本の医療や子育てに関する情報提供、発達に関する日本人専門家の存在が挙げられた。特に在留邦人であるが故の支援の脆弱さが、子育て困難さを増幅させ、邦人同士がつながりを持つための場と機会の提供は重要課題であった。今後は子育てに関する情報を発信しつつ、日系関連機関と連携しながら子育てを支援するシステム作りが必要である。