著者
田島 知郎 石井 明子 石津 和洋 葉梨 智子 近藤 泰理
出版者
特定非営利活動法人 日本乳癌検診学会
雑誌
日本乳癌検診学会誌 (ISSN:09180729)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.105-112, 2007-03-30 (Released:2008-07-25)
参考文献数
25

ロシアと中国での大規模臨床試験で, 乳房自己検査 (BSE) が無効と結論されたとの理解が広がり, わが国でも戸惑いが続いている。乳癌死リスク低下効果が検証できなかったとされる両研究であるが, BSE発見乳癌はコントロール群よりも早期の傾向で, また指摘すべき問題点が他にもある。まずBSE発見乳癌のサイズであるが, ロシアの研究ではT1以下がわずかであったのに対し, 中国の研究では48.8%で, この両方を一括解釈して, わが国に持ち込むことには疑問がある。また中国の研究では, BSE群とコントロール群との間に背景因子の違い, あるいは試験介入による健康状態への影響による総死亡数の差が約10%もあり, 両群比較の妥当性が問われる。さらに両研究の著者はマンモグラフィの優位性, BSE推奨だけで済まない医療側の責任, BSE普及と精検の費用などの問題も提起しており, 結果的にもBSE自体というよりも乳癌検診のあり方やBSE教示法の方が研究の主な目的であったとも言えよう。これまでの多数の非無作為試験の結果からも, BSE発見乳癌は早期の傾向で, 確実な技法の実践による予後改善が期待される。わが国には視触診, マンモグラフィ, 超音波を検診対象の全女性に, 質を保証して提供できるだけの設備, 専門医, 専門技師がまだ不足している一方で, BSEのメリットを最大限に生かせる素地があり, 乳癌啓発の入り口であり, 他の検査を補完する役割も果たすBSEを手放せない。
著者
幕内 博康 町村 貴郎 宋 吉男 水谷 郷一 島田 英雄 徳田 裕 杉原 隆 佐々木 哲二 田島 知郎 三富 利夫 大森 泰 三吉 博
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.24, no.10, pp.2599-2603, 1991-10-01
被引用文献数
30

近年,診断技術とくに色素内視鏡の進歩により,食道表在癌はもとより食道粘膜癌も増加してきた.粘膜癌で粘膜筋板に達しないものでは脈管侵襲やリンパ節転移をきたすことも極めてまれである.そこで内視鏡的粘膜切除術の適応を,(1)粘膜筋板に達しない粘膜癌,(2)長径2cm以下,(3)食道全長に多発していないもの,とした.われわれは18例23病巣に内視鏡的粘膜切除術を施行しており,このうち表在癌は15例19症巣であった.手技は,(1)ヨード染色により病巣の範囲を確認し,(2)病巣周囲にマーキングを行い,(3)インジゴカルミン・エピネフリン加生食水を粘膜下に注入し,(4)内視鏡的粘膜切除術を施行して組織を回収し,(5)再度ヨード染色で切除範囲を確認するものである.皮下気腫をきたした1例以外合併症はなく,穿孔例や緊急手術の適応となったものはない.本法の発展普及と食道癌の予後改善を期待する.
著者
水谷 郷一 幕内 博康 町村 貴郎 島田 英雄 菅野 公司 森屋 秀樹 堀江 修 宋 吉男 杉原 隆 花上 仁 佐々木 哲二 田島 知郎 三富 利夫
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.82-86, 1993-01-01
被引用文献数
12

われわれは4例の特発性食道破裂を経験しその臨床的検討を加えたので報告する.年齢は40〜63歳ですべて男性であり,4例ともに飲酒後の嘔吐を契機にして発症した.初診時に診断できたものは4例中1例のみであり,他の3例は正診できなかった.治療は1例が保存的に他の3例は手術を施行した.手術を施行した1例が敗血症で死亡したが他の3例は軽快退院となった.診断に際しては本疾患の認識が最も重要であり,胸部X線写真,胸部computed tomography(以下:胸部CTと略す),ガストログラフィンを用いた食道造影を早期に行うことが大切である.また治療は,1)破裂孔が比較的小さい.2)破裂が縦隔内にとどまっている.3)縦隔内の汚染が軽度である.4.胃内容が持続的に逆流しない4つを満たすものは保存的治療とし,それ以外の症例は手術により穿孔部の閉鎖,胸腔および縦隔内の洗浄,確実なドレナージを行うことが原則と考えられた.