著者
田村 武幸
出版者
特定非営利活動法人 日本バイオインフォマティクス学会
雑誌
JSBi Bioinformatics Review (ISSN:24357022)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.37-46, 2021 (Released:2021-04-23)
参考文献数
31

生体の細胞内では数千以上もの化学反応が、適切なタイミングで適切な量おこることにより、多様な機能が維持されている。代謝ネットワークは、細胞内の化学反応と化合物の関係をネットワークとして表現する。代謝ネットワークの種々の数理モデルの中でも、制約モデルを用いた流束均衡解析(Flux balance analysis: FBA)はゲノムスケールの代謝ネットワークに対しても高速なシミュレーションが可能であることが知られている。しかし所望の性質を持つ代謝ネットワークのFBAに基づく設計は、シンプルなFBAシミュレーションに比べて所用計算時間が激増するので、数理的な工夫をしなければ最新鋭の計算機システムを用いても実質的に計算不可能な場合が多い。本稿では、有用物質生産のための制約モデルに基づく代謝機能設計について、数理的側面を中心に、図例を用いながら基本的な問題設定やアルゴリズム、分野の動向等を解説する。
著者
田村 武幸
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

ブーリアンネットワーク(BN)は、細胞内での遺伝子の制御関係を記述するための離散的な数理モデルのひとつである。BNの定常状態を求める問題やBNを制御する問題はNP困難であることが知られているが、近年の計算機の高性能化により中規模のBNであれば厳密アルゴリズムや整数計画法を用いて解ける場合がある。本研究課題では、AND/OR BNの周期が2の定常状態を見つける厳密アルゴリズムを開発し、周期が1のBNの定常状態を見つける問題や、BNを目的状態へ導く問題、定常状態を制御する問題に対する整数計画法に基づく手法を開発した。