著者
黒澤 秀保 田村 浩司
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.139, no.6, pp.260-263, 2012 (Released:2012-06-11)
参考文献数
4
被引用文献数
2 3

一般の商品は,自由市場における需要と供給の一致点で価値が評価されて価格が決定される(ことになっている).一方,医療という公共性の強い世界の中に存在し,国民皆保険制度が敷かれている日本では,医薬品の価格は公定価格制となっている.日本における新薬の薬価は,中央社会保険医療協議会(以下,中医協)における薬価算定基準という複雑なルールに基づいた評価・了承を経て,厚生労働省が決定し薬価基準収載される.自由競争社会に生きる製薬企業が生み出すイノベーションの成果たる医薬品と,社会主義的環境にある医療の世界で使用される医薬品という二面性が複雑な薬価算定ルールを生み出し,薬の価値評価を困難なものにしていると言える.
著者
田村 浩司
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.139, no.5, pp.207-210, 2012 (Released:2012-05-10)
参考文献数
13

ICHガイドライン(ガイダンス)は,より良い新薬をいち早く世界中の患者さんや医療現場に届けるために必要なデータを科学的かつ倫理的に取得あるいは利用するためのツールである.医療環境の変化や技術革新,時代の要請や経験の蓄積などを踏まえて,ガイドライン(以下,GL)の新規作成や改正が継続的に行われている.承認申請資料はICH GLに則って作成されなければならないため,創薬研究者は各自の担当分野に関するGLについて,定期的にフォローしておくといいであろう.
著者
田村 浩司 小谷 結花
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.E3P2212-E3P2212, 2009

【はじめに】<BR>住み慣れた地域・環境で暮らし続けることは地域リハビリテーションの真髄であり、今後も我々は地域住民の暮らしを守る役割を担う.当地域には築50年を経過した農家づくりの住宅(以下古民家)が多く存在する.この古民家の特徴は「ふすまで区切られた部屋」「廊下がない」「玄関に敷居がある」「あがり框の段差が高い」などが上げられる.そのため、要介護者の玄関の出入りや屋内移動には住宅改修等の検討が必要となりやすい.さらに「住宅の間取りがほぼ一定」という特徴があることから、古民家に居住の要介護者の移動方法を把握することで、新たに移動方法の検討が必要とされるケースに対応しやすくなるのではと考え今回の調査を実施した.<BR><BR>【方法】<BR>調査対象は現在、訪問リハビリテーション実施者44名中、古民家にお住まいの方18名を対象に調査を行なった.年齢は57歳~90歳、平均75.5歳.性別は男性10名、女性9名.疾患別内訳は、脳血管疾患12名、変形性関節疾患2名、神経難病2名、その他2名であった.日常生活自立度はJランク1名、Aランク8名、Bランク6名、Cランク3名であった.調査項目は1.築年数2.増改築歴3.屋内での移動方法4.屋内外の出入り方法とした.各対象者には今回の調査の目的を説明し同意を得ている.<BR><BR>【結果】<BR>築年数は50年~130年.どの対象者も30年~40年前に増改築を実施しており、台所・浴室・トイレを増改築されていた.屋内での移動方法は車椅子移動3名、自立歩行(歩行補助具使用含む)9名、介助歩行(監視含む)4名、ベッド上2名であった.そのうち屋内移動用手すり使用者は自立歩行群で2名、介助歩行群で1名であった.屋内外の出入り方法は車椅子でスロープ使用者が4名、車椅子で段差解消機使用者が1名、歩行が13名であった.歩行で出入り群13名の内、手すりなしで自立が6名、手すりを利用し自立が2名、要監視・要介助が5名であった.その内、段差を低くするための踏み台設置者は、手すりなしで2名、要監視・要介助で1名であった.<BR><BR>【考察】<BR>屋内移動・屋内外の出入りにおいて手すりの使用例が比較的少なかった.屋内移動において、襖で区切られた部屋では手すりを設置しづらいことも考えられるが、壁や家具などのつたい歩き・柱や家具などにつかまる段差昇降といった方法が実施されていた.屋内外の出入りについても2段ある上がり框の昇降を柱や下駄箱を利用するという方法が多くみられた.車椅子用スロープの利用はいずれも玄関内までに2段階のスロープ利用が必要であったのが特徴的であり、車椅子での移動にはスロープ設置などの改修は必須であるという結果を得た.今後、入院から在宅への移動方法の検討を行なう際、対象者の住宅が古民家であってもできるだけ住み慣れた環境下での移動方法を心がけていくために、まず家具や柱など今ある住環境の利用も十分に考慮すべきである.