著者
大谷 壮介 田畑 直樹 東 和之
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.I_480-I_485, 2019 (Released:2019-10-09)
参考文献数
14

本研究では,カキ殻付着生物に着目して有機物の分解機能の定量化を行った.調査は2016年7月から2017年3月まで2か月ごとに大阪府貝塚市二色浜近傍において水質調査を行い,採集したカキ殻は実験室において酸素消費速度の計測を行った.殻上付着生物は付着動物(840μm以上)と付着有機物(840μm未満)の2つに分けて,付着動物には多毛類,藻類,ホヤ,二枚貝等が確認できた.また,殻上付着生物量は水深が深くになるに伴って大きくなり,付着動物の重量は付着有機物よりも大きかった.カキ殻上の付着生物による酸素消費速度は75.2±74.2(4.59-239)mgO2/m2/hourであり,そのうち80.5±14.0(47-97)%は付着有機物によるものであった.また,付着有機物による酸素消費速度は付着動物の酸素消費速度の5.63倍であった.以上のことから,カキ殻は付着生物に生息場を提供して有機物の分解機能を促進していることがわかった.