著者
宇野 宏司 高田 知紀 辻本 剛三 柿木 哲哉
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.I_677-I_682, 2015 (Released:2015-09-04)
参考文献数
12
被引用文献数
2

国生み伝説で知られる淡路島の海岸から1km圏内には多くの神社が鎮座している.本島沿岸は2012年に公表された内閣府による南海トラフ巨大地震の被害想定(第二次報告)で兵庫県下最大の津波被害が出ると予想されており,避難場所の確保が重要な課題のひとつになっている.本研究では,本島沿岸1km圏内に鎮座する神社の空間配置の諸情報(緯度経度・標高)と内閣府による津波被害の想定結果を用いて,将来の南海トラフ地震時における淡路島沿岸域の神社の津波被災リスクについて検証した.その結果,多くの神社が直接の津波被害を免れ,長い歴史をもつ神社の現在の空間分布は過去の大規模災害によって淘汰された結果を示しているという仮説を裏付ける結果が得られた.また,祭神による津波被災リスクの違いがあることも明らかにされた.
著者
秋本 哲平 熊谷 隆宏 福田 守芳 古川園 健朗
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.I_288-I_293, 2017 (Released:2017-08-22)
参考文献数
6

2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震とそれに伴って発生した津波により,福島第一原子力発電所は大きな被害を受け,高濃度の放射性物質を含む汚染水が漏洩した影響等により,港湾内海底土から放射性物質が検出された.放射性物質を含む海底土が巻き上がり,港湾外へ拡散することが懸念されたため,固化処理土による海底土被覆を行った.2012年度に第1期工事として72,600m2を被覆し,2014年度から第2期工事として,180,600m2を被覆した.第2期工事では,波浪条件が厳しい港口部を含んでいたことから,被覆土には早期強度が求められたため,砂質土を主材とする固化処理土を選定した.砂質土を主材とする固化処理土の課題であった水中打設時の材料分離は,特殊添加剤や打設治具を開発することで解決し,港湾内全域を被覆することができた.
著者
本村 眞澄
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.I_31-I_35, 2017 (Released:2017-08-22)
参考文献数
7

北極圏に埋蔵する石油・天然ガス資源に関しては,1970年代より多くの調査・研究が行われて来た.以来30年以上の年月を経て,近年ついに,ロシア北極圏での石油・天然ガス生産が一部で始まった.また,新たな油田発見も明らかになった.本論は,その主導的存在であるロシア北極圏の石油・天然ガス開発の最近の動向を紹介するとともに,北極圏での石油・天然ガス開発の意義について言及したものである.
著者
東 和之 大田 直友 河井 崇 山本 龍兵 丸岡 篤史 橋本 温 上月 康則
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.I_1091-I_1096, 2012 (Released:2012-09-18)
参考文献数
16
被引用文献数
1

代償措置として創出された人工干潟と模倣した自然干潟においてマクロベントスの定量調査を行い,干潟中下部生態系を再現できているかを検討した.マクロベントスの個体数は,自然干潟の方が人工干潟を大きく上回っており,種数についても自然干潟の方が多い傾向であった.干潟へ流入してくる栄養塩や底生珪藻量も自然干潟の方が高く,自然干潟の豊富な生物量はこれらの栄養塩や一次生産に支えられているようであった.両干潟の決定的な違いは,ホソウミニナの有無であったが,直達発生により分散能力が乏しいため,人工干潟にはほとんど加入していないこと,安定した自然干潟では爆発的な増加力を発揮していることが示唆された.以上のように,造成から約5年が経過した人工干潟であるが,潮間帯中下部の干潟生態系は模倣した干潟とは全く異なっていた.
著者
岡本 修
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.I_73-I_78, 2013 (Released:2013-09-13)
参考文献数
8
被引用文献数
2

本報告では,東日本大震災が起こった際に,東北地方と関東地方の太平洋側の港湾に在泊していた船舶がどのような行動をとったかについて,詳細に調査しとりまとめている.船舶としては漁船やプレジャーボートを除く120隻について情報収集を行なっている.また,これらの船舶被害等に関する調査結果と実際に来襲した津波諸元との関係を調べ,いくつかの図表に取り纏めている. このほか,船社に対するヒアリング調査などから,東日本大震災を踏まえた今後の震災に関する教訓事項について取り纏めた後,今後港湾において津波時の船舶の安全性を向上させるための対策についても考察を加えている.
著者
赤倉 康寛 安藤 和也
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.I_1175-I_1180, 2012 (Released:2012-09-18)
参考文献数
3
被引用文献数
1 1

国際海上コンテナ輸送量が伸び続けてきた中で,積み替えの容易なコンテナ貨物を巡る港湾間競争は,激しさを増してきた.我が国においても,釜山等に伍するサービスを提供し東アジア主要港として選択される港湾を目指した国際コンテナ戦略港湾政策が進展中である. 港湾間競争を勝ち抜くためには,ターミナル運営の効率化のため,稼働率を向上させる必要がある.そこで,本研究では,コンテナターミナルの稼働率を測る方法の一つとして,バース・ウィンドウの作成手法を構築し,主要ターミナルのバース占有率を比較分析した.
著者
福本 幸成 前田 修 福山 貴子 池谷 毅 稲垣 聡 岩前 伸幸 宇佐美 栄治 石原 孟
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.I_13-I_18, 2014 (Released:2014-10-01)
参考文献数
7
被引用文献数
1

2013年1月,銚子沖洋上風力発電所は,わが国初の沖合洋上風力発電所として運転を開始した.実証研究設備として,洋上風車の性能評価や洋上風況の評価,環境影響調査など,着床式洋上風力発電の技術を総合的に確立していく.発電所建設前から47ヶ月にわたり観測してきた波浪データによれば,当海域は常に波高が高く「うねり」が来襲しやすい.また,台風1326号により設計波高に近い観測最大の最高波高が発生し,基礎に衝撃砕波力が作用したと推定される.これらの観測結果等から,洋上風力発電の導入拡大のためには,高い波高や「うねり」に適用できる船舶の調達や,近隣の基地港湾の整備が課題と思われる.
著者
久保田 謙作 高橋 祐 高橋 隆男 南雲 一也 伊藤 正喜
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.I_227-I_232, 2013 (Released:2013-09-13)
参考文献数
4

消波ブロックの安定性については,海岸構造物を保全するうえで最も重要な要素のひとつであり,これまで水理模型実験など多くの研究が行われ,それにより求められた安定数算定式は設計手法として一般的に用いられるようになっている.一方,厳しい海象による海岸構造物の被災は留まることはなく,特に,最近の異常気象による被災は大きく,現地に応じた波浪対策設計が求められている.本研究では,被災した消波ブロックの詳細な現地調査を行い,既往の安定数算定式から算出された数値との比較評価により適用性を確認するとともに,近傍のナウファスデータを換算して波浪データに用いる手法を示している.これらについては,当海岸と同様な急勾配で岩礁を有する礫海岸での設計検討において大いに参考となるものと考えられる.
著者
星野 さや香 柴山 知也 Miguel ESTEBAN 高木 泰士 三上 貴仁 高畠 知行
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.I_994-I_999, 2013 (Released:2013-09-13)
参考文献数
8
被引用文献数
1

気候変動が現在のペースで100年にわたり継続したと仮定して,将来の気象条件下で強大化した台風が日本に来襲した場合に発生する高潮の危険性を予測し,沿岸域防護手法を提案した.東京湾を例として検討し,算出した高潮より標高の低い地域について,失われる資産額の算出を行った.また,算定した最高高潮水位を水準とした防潮堤の嵩上や新設,堤外地の地盤高の嵩上にかかる費用の算出を行った.約100年後の気象条件下で,190cmの海面上昇を考慮した場合,東京港・川崎港・横浜港には標高にしてそれぞれ4.5m・4.0m・3.9mの高潮高を推算した.これらの標高以下の地域が全て浸水したと想定すると,東京では75兆円,神奈川では4兆円を越える被害が出る.強大化した台風が防潮堤や水門の機能を停止する場合を想定して,将来的に荒川流域の高潮防護計画を確立する必要がある.算出した高潮高への対策として胸壁防潮堤の新設・堤外地の嵩上を行うと,直接的費用は東京港において約2,600億円,川崎港・横浜港において約1,200億円となる.
著者
高木 泰士 呉 文潔
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.1-6, 2015 (Released:2015-06-20)
参考文献数
26
被引用文献数
3

最大風速半径は高潮解析における重要なパラメータの一つである.本研究では,最大風速半径の推定手法をレビューするとともに,新たな手法を提案した.中心気圧や最大風速を使用する従来の手法は,最大風速半径の平均的な傾向を表すが,ばらつきが大きく,高潮を過大・過小推定する可能性が高い.沖縄や鹿児島の島々には10ヶ所もの気象観測所が存在し,陸地の影響をあまり受けていない台風時の気象データを入手できる.本研究では,観測所データとベストトラックデータを分析することで,暴風域半径が最大風速半径の推定に有効であることを示した.暴風域半径を用いる方法は,推定誤差が小さく,より信頼性の高い高潮解析が期待できる.本手法は,日本の他,中国や台湾,フィリピンなど日本南方海域で発生する規模の大きな高潮の予測に特に有効である.
著者
高木 泰士 Luc HENRY 水落 拓海
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.1-9, 2019 (Released:2019-02-20)
参考文献数
21

倉敷市真備町では西日本豪雨で堤防が決壊し,約2100世帯が全壊した.被害拡大の一因として本支川合流部の背水による水位上昇が指摘されている.一方,高梁川河口は河川改修や臨海開発で川幅が著しく広がっており,瀬戸内海でも日潮差が特に大きい場所に位置するため,潮汐が河川水位に影響した可能性も無視できない.本研究では,洪水時に感潮域が潮止堰の上流側に延伸する可能性や,2018年豪雨で河川水位上昇と上げ潮の時間帯が一致していたことなど,潮汐の影響を各種解析で示した.また,高梁川沿いに現地調査を行い,上流では10m以上も水位上昇したにも関わらず,河口では満潮位程度の水位であったことを明らかにした.以上より,潮汐と河川水位の関係性を考察し,洪水に及ぼす海からの影響について指摘した.
著者
間瀬 肇 Tracey H. TOM 池本 藍 志村 智也 安田 誠宏 森 信人
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.I_115-I_120, 2014 (Released:2014-10-01)
参考文献数
6

地球温暖化対策およびエネルギー安全保障の観点から,再生可能エネルギー利用のさらなる進展が必要である.風力エネルギーは風速の3乗に比例して増加するが,経済性の向上には風況の良い場所の選定が重要となる.経済性の目安としては,ハブ高さ80mにおいて年間平均風速が7m/s以上とされている.陸上においては,全国風況データ,500mメッシュで解析した風況マップや風配図が提供されているが,日本沿岸海域においては,詳細な風況・波浪マップはまだ提供されていない.本研究は,今後の洋上風力発電施設の設置場所選定に役に立つように日本沿岸海域の風況・波浪マップを作成し,風と波の概況を把握するものである.
著者
久保田 謙作
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.I_504-I_509, 2012 (Released:2012-09-18)
参考文献数
4

海岸構造物の損傷・磨耗状況や消波ブロックの被災状況を知ることは,海岸構造物を維持・管理する上で極めて重要である.しかしながら,これまで消波護岸の海中部の磨耗状況を詳しく調査した例は殆どなく,磨耗のメカニズムも殆ど明らかにされていない.したがって,護岸や消波ブロックの磨耗・損傷の現地調査データの蓄積が望まれている.本論文では,新潟県親不知海岸における高速道路高架橋の波浪対策護岸工の磨耗調査を詳しく行い,損傷メカニズムを明らかにしている.さらに,現地海岸の構成材料および海象状況に応じた対策法を策定,実施しており,現時点でのその効果についても紹介している.これらの調査・対策法は,同様な波浪および海岸等の自然条件下で磨耗対策を実施する際に役立つものと考えられる.
著者
渡辺 雅子 山本 龍兵 采女 尚寛 上月 康則 岡田 直也 玉井 勇佑 野上 文子 河井 崇
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.I_916-I_920, 2015 (Released:2015-09-04)
参考文献数
5
被引用文献数
3

希少種ルイスハンミョウの生息地消失に対する代償措置として創出された海浜において,ルイスハンミョウ幼虫の生息可能な場所の面積を増やすための手法検討が本研究の目的である.そのため,幼虫の生息環境について,生息標高や植生被度,地盤の安定性を調査した.その結果,(1)標高0.7~1.0m,(2)植生被度25%以下,(3)地盤の変動係数6.7%以下の場所に生息していた.幼虫の生息場所を増やすためには,標高を調節する,植生を除去する,地盤を安定するなどの方法が考えられる.幼虫生息場創出実験により,調節した標高を維持することは難しいが,植生除去により創出した生息地を1年以上維持できることが分かった.以上のことから,維持管理や得られる面積の広さを考慮した結果,ルイスハンミョウ幼虫の生息場の創出方法として海浜植生除去が効果的であると考えられた.
著者
西 隆一郎 金子 有理 福永 和久 鶴成 悦久
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.I_941-I_946, 2020 (Released:2020-09-28)

2014年10月に来襲した台風1418号と1419号により,鹿児島県奄美大島の南南東側で太平洋に面する瀬戸内町嘉徳集落前の嘉徳海岸で顕著な侵食被害が生じた.この時,後浜の侵食に加えて,嘉徳集落の墓地や民家の数m近くまで海岸砂丘が侵食され,砂丘としては20m程度後退した.台風銀座とも呼ばれる地域でもあり,台風は毎年来襲する可能性が高い.加えて,海岸砂丘上にある集落を護るために海岸保全の要望が地域住民からあった.一方,海岸保全だけでなく,絶滅危惧種オカヤドカリを含む海岸生態系への影響や景観および世界自然遺産登録への影響を考慮する必要性のある海岸でもあった.そこで,本論文では,台風1418号と1419号に伴う本海岸の海岸侵食機構の解明と,経年的な海岸過程について明らかにし,その後,海岸保全,環境保全,海岸利用が適切に調和した海岸保全の方向性に関し検討することにした.
著者
野志 保仁 宇多 高明 高橋 紘一朗 中田 祐希
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.I_721-I_726, 2022 (Released:2022-10-18)
参考文献数
5
被引用文献数
2

2021年8月13日,小笠原諸島の海底火山「福徳岡ノ場」が噴火した.この噴火により発生した大量の軽石が2021年10月17日頃から沖縄本島北部を中心に漂着し,漁業,海運,観光業に著しい影響をもたらした.そこで2021年10月28日には沖縄本島北部,本部半島の北側に位置する屋我地漁港周辺を対象として急遽現地調査を行った.UAVにより漁港周辺での軽石の漂着状況の映像を取得するとともに,漁港周辺海岸での漂着軽石の現地調査を行った.北側から運ばれてきた軽石は,漁港防波堤により移動が阻止されたため漁港の北側に大量に堆積したことが分かった.
著者
竹田 聖二 井手 喜彦 児玉 充由 橋本 典明 山城 賢
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.I_907-I_912, 2021 (Released:2021-09-30)
参考文献数
9

地球温暖化に伴う台風の強大化等により高潮災害の激甚化が懸念されていることから,台風が来襲する数日前に高潮の規模及び発生時刻を予測するリアルタイム高潮予測の研究が行われている.しかし,台風時の気象予測は不確実性が大きく,気象外力に起因する高潮の正確な予測は難しい.不確実性を考慮した検討にはアンサンブル実験の実施が求められるが,膨大なケースの数値シミュレーションをリアルタイムで行うことは計算コストの観点から現実的ではない.そこで本研究では,ニューラルネットワークを用いて,台風予測の不確実性を考慮した確率論的リアルタイム高潮予測システムを開発した.本システムでは,生じうる高潮偏差を信頼区間とともに導出でき,自治体が住民に適切な行動及び対策を呼びかける際の新たな指針となり得る情報の提示が可能となる.
著者
安部 智久
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.I_19-I_24, 2018 (Released:2018-09-12)
参考文献数
9

北極海航路(NSR: Northern Sea Route)の利用により欧州アジア間の輸送距離が短縮されることから,物流分野において効率化が期待されている.コンテナ輸送については,従来のスエズ運河経由による海上輸送と航空輸送との中間的なサービスとなり得る.本研究では,現状の北極海航路の航行実態や輸送サービス(時間,コスト)について実績データ等から評価を行ったうえで,その利点である輸送時間短縮による効果を踏まえた北極海航路の利用形態や既存の輸送経路に対する優位性などについて,荷主の視点から考察を行った.
著者
板宮 朋基 村上 智一 小笠原 敏記 川崎 浩司 下川 信也
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.I_773-I_778, 2018 (Released:2018-09-12)
参考文献数
19

最大級台風の最悪コースによる三大湾への襲来に対する高潮浸水予測の数値計算は,これまで数多く行われている.その結果は自治体などにおいてハザードマップなどの防災情報として活用されている.しかし,地域の住民や子供たちに有益な防災情報として提供していると思われがちであるが,実際には災害をリアルに捉えることが難しく,発災時に取るべき行動を,感覚的・知覚的に学ぶことができない.そこで本研究では,数値計算で得られる高潮浸水の結果を基に,専門知識がない人でも直感的に浸水状況を理解してもらうため,VR(人工現実感)ヘッドマウントディスプレイ(HMD)を用いた高潮想定没入体験システムの開発と有用性の評価を行う.HMDはスマートフォンに装着して用いるため,1セット当たり約9万円と低価格で構築でき,運用が容易である.
著者
里村 大樹 水谷 雅裕
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.I_145-I_150, 2014
被引用文献数
1

近年海上輸送・港湾分野において保安対策が強化されているが,一方で,国内主要港湾のコンテナターミナル周辺では国際海上コンテナ輸送車両の渋滞解消策が求められている.<br> 本研究では,現地調査による実態把握を行い,保安対策が強化された場合の待ち時間,待ち台数をシミュレーションにより計算した.横浜港本牧埠頭BCターミナルでは,最大のトラック待ち台数は午前のゲートオープン前の約300台で,待機列はゲートオープン後1時間程度で解消していた.保安対策が強化されてコンテナ搬入の処理時間が5分長くなる場合,現状設備ではオーバーフローするが,ゲート処理方法を変更することでその日のうちに処理できる結果となった.保安対策が強化された場合では,昼にゲートオープンするケースでも,現状設備ではオーバーフローする結果となった.