著者
松下 紀子 小宮山 浩大 田辺 康宏 石川 妙 北條 林太郎 林 武邦 深水 誠二 手島 保 櫻田 春水
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.45, no.9, pp.1117-1121, 2013-09-15 (Released:2014-09-17)
参考文献数
10

症例は,45歳,男性.通勤時に突然の上腹部痛を自覚し他院へ搬送された.精査のために施行した腹部造影CTで上腸間膜動脈に解離を認め,急性上腸間膜動脈解離症と診断され,加療目的に当院へ搬送となった.来院時は血圧 143/85mmHg,上腹部に自発痛と圧痛を認めたが腹膜刺激症状は認めなかった.血液検査ではアシドーシスは認めず,CK 182U/Lと軽度高値,D-dimerは正常範囲内で腸管虚血を示唆する所見は認めなかった.軽度の腹痛は残存するものの,症状は落ち着いていたため保存的加療の方針とし,禁食・ヘパリン持続投与を開始した.来院8時間後に,急な腹痛を訴え腸管の虚血所見を認めたため緊急カテーテル検査を施行した.上腸間膜動脈起始部から解離を認めIVUSでは偽腔により真腔が大きく圧排されていた.解離を修復するように遠位より,2本のステント(PALMAZ Genesis® 6×15mm,E-Luminexx® 10×60mm)を留置し,良好な血流が得られ腹痛も軽快した.急性上腸間膜動脈解離は比較的稀であり,その治療法も一定していない.今回,われわれは急性期に反復する腹痛と腸管虚血を呈した上腸間膜動脈解離に対してステント留置を行い良好な結果が得られた.文献的考察を踏まえて報告する.
著者
手島 保 水澤 有香 田辺 康宏 深水 誠二 辰本 明子 弓場 隆生 小宮山 浩大 仲井 盛 小田切 史徳 北條 林太郎 高野 誠 櫻田 春水 平岡 昌和
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.42, no.SUPPL.1, pp.S1_30-S1_33, 2010 (Released:2012-08-21)
参考文献数
4

Brugada症候群の症例の心事故発生のリスクを層別化するために, 当科でcoved型ST上昇が確認された115例を検討した. 対象は男性108例, 女性7例で有症候性例は20例であった. 全例で加算平均心電図, 73例でpilsicainide負荷テスト, 87例に電気生理学的検査を施行した. 加算平均心電図のRMS40値は有症候性例で有意に低値(7.11, p < 0.01)でRMS40値が5µV未満の症例には有症候性例が有意に多かった(p < 0.01). RMS40値が10µV未満をLP強陽性とすると, 有症候性例には自然経過のcoved型ST上昇の出現(p=0.0013), LP強陽性例が有意に多く(p < 0.0001), 突然死の家族歴を有する傾向(p=0.065)が見られた. しかし電気生理学的検査におけるVFの誘発性には症候性例と無症候性との間に有意差は認められなかった. Pilsicainideを負荷するとRMS40の値は有意に低下したが, 症候性例と無症候性例を判別するには有用ではなかった. Brugada症候群のリスクの層別化には加算平均心電図は有用であり, LP強陽性例で特にRMS40値が5µV未満の症例はhigh riskである.