著者
小田切 史徳 中里 祐二 秋山 泰利 島野 寛也 高野 梨絵 木村 友紀 塩澤 知之 田渕 晴名 林 英守 関田 学 戸叶 隆司 住吉 正孝 代田 浩之
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.165-175, 2018-11-02 (Released:2018-12-28)
参考文献数
28

皮下植込み型除細動器(subcutaneous implantable cardioverter defibrillator : S-ICD)の有効性と安全性は,すでに海外の臨床試験データから示されているが,これらのデータに本邦での使用経験は含まれていない.今回,当施設におけるS-ICDの初期使用経験について報告する.対象は2016年3月から9月までに当施設でS-ICD植込みを行った7例と,対照として経静脈的植込み型除細動器(transvenous implantable cardioverter defibrillator : TV-ICD)植込みを行った10例である.患者背景,原疾患,検査所見,既往歴,内服薬,手術方法,作動状況などについて,両群で比較検討した.植込み術を施行された17例(S-ICD 7例およびTV-ICD 10例)を213±86(127〜312)日後まで観察した.S-ICD植込みを行った7例は全例男性で,平均年齢は46.3±14.1(34〜68)歳,BMI(body mass index)は23.3±2.6(20.7〜27.9)kg/m2であった.一次予防目的が4例,二次予防目的が3例であった.また,原疾患に関しては,虚血性心筋症2例,非虚血性心筋症2例,Brugada症候群などを含むその他が3例であった.S-ICD植込み群は,7例全例で術中に除細動テストを施行し,そのうちの1例はシステム位置の再調整を要した.観察期間内で,S-ICD植込み群およびTV-ICD植込み群ともに適切作動は見られなかったが,S-ICD植込み群において,2例の不適切作動が見られた.有害事象については,TV-ICD植込み群と有意差は認められなかった.S-ICDは,植込み時に本体・リードの位置に注意を要するものの,短時間で安全に植込み可能であった.当施設で経験した2例の不適切作動は,心房粗動波とノイズのいずれもオーバーセンシングが原因と考えられ,適切なスクリーニング方法,治療ゾーンの調整やセンシングベクトルの選択には今後の検討を要すると考えられた.(心電図,2018;38:165~175)
著者
手島 保 水澤 有香 田辺 康宏 深水 誠二 辰本 明子 弓場 隆生 小宮山 浩大 仲井 盛 小田切 史徳 北條 林太郎 高野 誠 櫻田 春水 平岡 昌和
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.42, no.SUPPL.1, pp.S1_30-S1_33, 2010 (Released:2012-08-21)
参考文献数
4

Brugada症候群の症例の心事故発生のリスクを層別化するために, 当科でcoved型ST上昇が確認された115例を検討した. 対象は男性108例, 女性7例で有症候性例は20例であった. 全例で加算平均心電図, 73例でpilsicainide負荷テスト, 87例に電気生理学的検査を施行した. 加算平均心電図のRMS40値は有症候性例で有意に低値(7.11, p < 0.01)でRMS40値が5µV未満の症例には有症候性例が有意に多かった(p < 0.01). RMS40値が10µV未満をLP強陽性とすると, 有症候性例には自然経過のcoved型ST上昇の出現(p=0.0013), LP強陽性例が有意に多く(p < 0.0001), 突然死の家族歴を有する傾向(p=0.065)が見られた. しかし電気生理学的検査におけるVFの誘発性には症候性例と無症候性との間に有意差は認められなかった. Pilsicainideを負荷するとRMS40の値は有意に低下したが, 症候性例と無症候性例を判別するには有用ではなかった. Brugada症候群のリスクの層別化には加算平均心電図は有用であり, LP強陽性例で特にRMS40値が5µV未満の症例はhigh riskである.