著者
増田 理恵 田高 悦子 渡部 節子 大重 賢治
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.59, no.8, pp.557-565, 2012 (Released:2014-04-24)
参考文献数
23

目的 肥満は心血管系疾患等のリスク要因となるが,地域で生活する成人知的障害者には肥満が多いことが指摘されてきた。本研究の目的は,地域で生活する成人知的障害者の肥満の実態および肥満をもたらす要因を明らかにすることにより,肥満予防に向けた実践への示唆を得ることである。方法 A 市における 5 つの通所施設•相談施設に通う男女39人を対象に,BMI,食事,活動についての面接調査を行った。対象者の基本属性について,項目別の単純集計を行った。BMI については平成19年版「国民健康•栄養調査」における20~59歳の一般成人の平均値と t 検定を用いて比較した。エネルギー摂取については,対象者の摂取エネルギー,摂取エネルギーと推定必要エネルギーの差,および食品群別摂取量を算出した。またエネルギー消費については,消費エネルギー,身体活動レベル,エクササイズ量を算出し,身体活動レベルについてはカイ 2 乗検定により一般成人と比較した。食習慣については 7 つの質問項目の和(食習慣得点)を算出した。さらに対象者の BMI について,対象者の属性,エネルギー摂取に関連する項目,エネルギー消費に関連する項目,食習慣得点,および食品群別摂取量との相関分析を行った。結果 対象者の BMI の平均値は一般成人と比較すると男女とも有意に高かった(P<0.001)。摂取エネルギーと推定必要エネルギーの差の平均値は男性で396±503 kcal,女性は569±560 kcal であった。BMI との有意な相関(P<0.05)がみられたのは摂取エネルギー,摂取エネルギーと推定必要エネルギーの差,消費エネルギー,穀類摂取量,菓子類摂取量,食事制限の有無であった。対象者の身体活動レベルは,一般成人に比べて低い者の割合が有意に高かった(P<0.001)。結論 対象者の BMI の増大をもたらしている要因は,主には過剰なエネルギー摂取であり,その背景には間食で菓子類を多く摂取するなど不適切な食習慣がある。また,一般成人に比して著しく低い身体活動レベルが対象者の生活上の特徴であることが明らかとなった。成人知的障害者の肥満対策として,過剰なエネルギー摂取,不適切な食習慣,低い身体活動レベルのすべてに対し,包括的に介入する必要がある。
著者
今松 友紀 田高 悦子 Yuki Imamatsu Etsuko Tadaka
出版者
横浜市立大学医学部看護学科
雑誌
横浜看護学雑誌 = Yokohama journal of nursing (ISSN:18828892)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.1-8, 2012-03-31

本研究の目的は、文献検討により生活習慣病への介入と評価指標について調査し、地域における生活習慣病の一次予防プログラムの枠組みを明らかにすることである。生活習慣病・予防・介入をキーワードとした国内外の18文献について、Greenが提唱したPRECEDE-PROCEED MODELを使用してプログラムとその評価法を検討した。その結果、プログラムの計画については【スキル1:生活習慣病の予防に向けた理解】、【スキル2:自身の行動変容に向けた目標設定】、【スキル3:自身の生活習慣の内省・モニタリング】、【スキル4:生活改善の具体的な実践方法】の4つのスキルからなることがわかった。また、プログラムの評価については「生活習慣の変容」と「セルフモニタリングの実施状況」からなる行動・ライフスタイルは記述されていたが、環境(地域)について記述している文献は見られなかった。今後は、個人の変容と環境(地域)の変容の両方に着目したプログラムとそれの評価法の開発が必要である。(著者抄録)