著者
有田 豊 由良 文隆
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.91-92, 1988-05-10

コシアカスカシバSesia molybdoceps(HAMPSON)の食草としてはブナ科のツクバネガシが知られていた(渡辺,1967).著者らは愛知県の名古屋市内と春日井市内で1983,1985,1986年に同じブナ科のクリ,クヌギ,コナラよりスカシバガ科の幼虫を見つけ,飼育した所いずれの植物からもコシアカスカシバが羽化した.幼虫は樹幹の樹皮下を楕円状に食害し,樹液に体の半分がつかっていた.樹皮の外に,糞を出すが,その穴より夏の間にしみ出た樹液にスズメバチ類やカナブンなどの甲虫が吸汁に集まっていた.幼虫は8月上旬頃より幼虫の坑道やその近くの樹皮下で木屑をつづり合わせたマユを作り蛹化する.井上によって本種の♂と♀が講談社の日本産蛾類大図鑑に図示されたが,その内の♂は,Sesia contaminata(BUTLER)ハチマガイスカシバの♂の間違いである.