著者
有田 豊 木村 正明 大和田 守
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.189-192, 2009-09-30

チュラスカシバ(新称)Paradoxecia chura Arita,Kimura&Owada,sp.nov.本部半島乙羽岳で9月に性フェロモン・ルアーに誘引された雄1頭が採集されている.腹部2-7節の各節に幅広い黄帯があることで,同属の種と区別できる.Paradoxeciaは亜熱帯アジアから12種が知られているが,日本からは今まで記録がなかった.クロスカシバ(新称)Nokona nigra Arita,Kimura&Owada,sp.nov.腹部が黒く,黄帯を欠いているので,同属の種とは容易に区別できる.沖縄島ヤンバル地域で6月と9月に採集されている.
著者
有田 豊 大和田 守
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.1-4, 2006-01-10

ホソハマキモドキガ科は旧北区から54種類が記録されている(Diakonoff, 1986).また本邦からは21種類産することが知られている(Arita, 1987).国立科学博物館が行っている皇居の蛾類調査でこの昼飛性のホソハマキモドキガ科の未記載積の一種が採集された(Owada et al., 2000).またこの未記載種は赤坂御用地からも見出された(Owada et al., 2005).精査の結果この種類は今までに知られていない新種と認められた.Glyphipterix mikadonis sp. nov. トウキョウホソハマキモドキ(新称)(Figs 1-4) ホソハマキモドキとしては中型の種類で,前翅後縁上の薄い黄色の2紋が特徴的で,容易にほかのホソハマキモドキと区別される.皇居吹上御苑と赤坂御用他のやや開けた草地で5月下旬から6月上旬の日中に飛翔しているものや草地のスイーピングによって得られた.
著者
有田 豊 Gorbunov Oleg G.
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.157-173, 1996
参考文献数
23

タイで得られたスカシバガ科,モモブトスカシバ属Melittia Hubner,[1819]の2新種,M.sukothai sp.nov.とM.bella sp.nov.を記載し,東洋熱帯から知られている3種,M.eurytion(Westwood,1848),M.nepcha Moore,1879およびM.gorochovi Gorbunov,1988をタイから新しく記録した.今までにタイから記録されていたM.siamica Walker,[1865]と合わせてMelittia属は6種類になる.Melittia eurytion(Westwood,1848)(Figs 1-3,9,11-12)個体の大きさは,開張25-34mmとかなり変化がある.前翅中室外方透明紋も大きさや形にかなりの変異がある(Fig.9).食草は不明であるが,成虫は4-5月,7-9月に採集されている.また水銀灯を使った夜間採集の灯に夜明け前に数頭が飛来した.Melittia nepcha Moore,1879(Fig.4)インド(ダージリン),ネパール,北ベトナムから記録があり,今回タイ北部のチェンマイから1♂を初めて記録した.Melittia sukothai sp.nov.(Figs 5,13)本種はややM.newara Moore,1879に似ているが,後脚脛節の長毛の前半がM.newaraでは黄色なのに対して本種では白いことで区別される.食草や生態などは不明である.Melittia bella sp.nov.(Figs 6,14,16)この新種はamboinensisグループに非常によく似ている.前翅中室外方透明紋の形でこのグループのcelebica Le Cerf,1916,meeki Le Cerf,1916およびmarangana Le Cerf,1916と区別される.2♀がタイの低地で採集されているのみである.Melittia gorochovi Gorbunov(Figs 7-8,10,15,17)ベトナムから記載された種であるが,今回タイからも記録された.タイでは8-11月に熱帯林を切り開いた林縁部で採集された.
著者
神谷 健一 田原 憲和 柿原 武史 三浦 由香利 堂浦 律子 川口 陽子 井上 昭彦 黒田 恵梨子 金 善美 高木 美菜子 池谷 尚美 齊藤 公輔 有田 豊 寺尾 美登里 林 和子
出版者
大阪工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究課題は9言語15名から成る共同研究プロジェクトであった。最終的に冊子版の研究成果報告書を作成し、主に大学で初習外国語教育に携わる関係者に配布した。PDF版は http://www.oit.ac.jp/ip/~kamiya/gk-fires/ からダウンロードできるようになっているので参照されたい。
著者
有田 豊 GORBUNOV Oleg G. MOHAMED Maryati
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.131-142, 2003-03-30

ボルネオ島サバ州のマリアウベースン保護地域で第一著者の有田は2001年5月6-12日の短期間にスカシバガ科の調査を行った.スカシバガ科の調査は合成性フェロモンを用いて行ったが少数の個体が得られたのみであった.そのうちの2新属2新種と1新種を記載した.Bidentotinthia Arita&Gorbunov gen.nov.ヒメスカシバガ亜科のTinthiini族のTinthia Walker,1865,Microsphecia Bartel,1912,Zenodoxus Grote&Robinson,1868,Sophona Walker,1856諸属に外形が似ているが,♂ゲニタリアが異なるので新属を設けた.Bidentotinthia borneana Arita&Gorbunov sp.nov.(Figs 1,4,6a-d)Trichocerota brachythyra Hampson,1919にいくぶん似ているが,ラビアル・パルプス,脚,腹部などの色彩が異なることで区別される.合成性フェロモンに1雄のみ飛来した.Tarsotinthia Arita&Gorbunov gen.nov.V字型の横脈や長い後脚,♂ゲニタリアなどによってOsminiini族のAschistophleps Hampson,1893,Pyrophleps Arita&Gorbunov,2000両属と区別される.Tarsotinthia albogastra Arita&Gorbunov sp.nov.(Figs 2,5,7a-d)長い後脚と腹部裏面が白いことで他の種類と分離できる.合成性フェロモンに1雄のみ飛来したScoliokona hyalina Arita&Gorbunov sp.nov.(Figs 3,8a-d)S.tetrapora(Diakonoff,1968),S.heptapora Kallies&Arita,1998と似ているが,これら2種とは後翅に幅広い外縁帯がないことや♂ゲニタリアで区別される.合成性フェロモンに3雄のみ飛来した.
著者
Spatenka Karel 有田 豊
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.95-106, 1992
被引用文献数
1

著者らは日本から5新種,1新亜種と中国から2新種のスカシバガを見いだし記載した. 1. Synanthedon esperi Spatenka & Arita, sp. n.沖縄島与那で採集された1雌のみが知られている.本種はanal tuftが赤いことや腹部腹面が黄色であることから他の種とたやすく区別できる.食草や生態は不明. 2. Synanthedon multitarsus Spatenka & Arita, sp. n.本種は腹部背面第4節後縁にのみ1本のやや広いレモン色の帯をもつことで他の種と分けられる.ヤナギ類(北海道)やネコヤナギとカワラハンノキ(愛知県)から飼育によって多くの成虫が得られた. 3. Synanthedon yanoi Spatenka & Arita, sp. n.本種は腹部背面第2節と第4節後縁に黄色の細い帯をもつことで他の種と区別できる.北海道斜里郡小清水町と大分県黒岳からのみ知られ,食草その他のことは不明である. 4. Synanthedon pseudoscoliaefoyme Spatenka & Arita, sp. n.前翅のdiscal spotの形がヨーロッパのS. scoliaeforme (Borkhausen, 1789)に少し似ているが本種ははるかに小さく腹部背面第2節と第3節に白い帯をもつことで区別される.京都の宝ケ池で5月10日に1雌が得られただけである. 5. Synanthedon scoliaeforme japonicum Spatenka & Arita, sp. n.ヨーロッパのS. scoliaeforme (Borkhausen, 1789)に酷似するが日本産のものはより大きい. Anal tuftが基亜種ではオレンジ色であるが亜種japonicumでは黒いことが大きな差異である.基亜種の食草はシラカンバであるが本亜種も北海道斜里郡で川原進氏によってシラカンバの幹の根際より蛹が繭とともに発見され1雄1雌が羽化した. 6. Synanthedon fukuzumii Spatenka & Arita, sp. n.腹部背面に「赤帯」をもつSynanthedon属のいくつかの種に似るが本種は腹部第4節の後縁にのみ赤帯をもつことから他の「赤帯」の種から区別できる. 7. Sesia solitera Spatenka & Arita, sp. n.中国青海省日月山の高山帯(3500-4000m.)で得られた1雄のみが知られる.非常に特異な種で他に近似の種はない. 8. Similipepsis yunnanensis Spatenka & Arita, sp. n.中国北部雲南省のA-tun-tseの高山帯(約4000 m.)で得られた2雄をドイツ・ボンのAlexander Koenig動物学博物館のHoneコレクションより見いだした.本種はいわゆる腰の細い種類で日本のコシボソスカシバに良く似る. Yunnanensisでは腹部背面第3節と第6節にナレンジ色の帯をもつがtakizawaiでは第3節に帯はない.
著者
有田 豊 由良 文隆
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.91-92, 1988-05-10

コシアカスカシバSesia molybdoceps(HAMPSON)の食草としてはブナ科のツクバネガシが知られていた(渡辺,1967).著者らは愛知県の名古屋市内と春日井市内で1983,1985,1986年に同じブナ科のクリ,クヌギ,コナラよりスカシバガ科の幼虫を見つけ,飼育した所いずれの植物からもコシアカスカシバが羽化した.幼虫は樹幹の樹皮下を楕円状に食害し,樹液に体の半分がつかっていた.樹皮の外に,糞を出すが,その穴より夏の間にしみ出た樹液にスズメバチ類やカナブンなどの甲虫が吸汁に集まっていた.幼虫は8月上旬頃より幼虫の坑道やその近くの樹皮下で木屑をつづり合わせたマユを作り蛹化する.井上によって本種の♂と♀が講談社の日本産蛾類大図鑑に図示されたが,その内の♂は,Sesia contaminata(BUTLER)ハチマガイスカシバの♂の間違いである.
著者
大和田 守 有田 豊 神保 宇嗣 岸田 泰則 中島 秀雄 池田 真澄 平野 長男
出版者
国立科学博物館
雑誌
国立科学博物館専報 (ISSN:00824755)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.37-136, 2006
被引用文献数
5

Six hundred and thirty-three moths in 46 families were collected in the Imperial Palace, Tokyo, ca. 115 ha. The survey was carried out from June 2000 to December 2005 by using a light, sugar bait and by ordinary day-time survey of adults and larvae. All the collecting data are given in the list, in which some noteworthy moths are commented in comparison with the records of such green tracts in the urban Tokyo as the Imperial Palace, Tokyo, 1996-2000 (Owada et al., 2000), the garden of the Institute for Nature Study, ca. 20 ha, 1998-2000 (Owada et al., 2001), the Akasaka Imperial Gardens, ca. 51 ha, 2002-2004 (Owada et al., 2005a) and the Tokiwamatsu Imperial Villa, ca. 2 ha, 2002-2004 (Owada et al., 2005b). The comparison of each result is shown in Tables 1 and 2. During a decade of survey period from 1996 to 2005, we observed the establishment and outbreak of a tortricid moth Cerace xanthocosma in the Imperial Palace, Tokyo, and the Akasaka Imperial Gardens (Owada et al., 2000, 2001, 2005a), and the details were summarized in the report of moths of the Tokiwamatsu Imperial Villa, Tokyo (Owada et al., 2005b). We became aware of the remarkable outbreak in the early spring of 2003, i. e., many nests made by the larvae of this tortricid moth were found on leaves of evergreen trees everywhere in the Imperial Palace and the Akasaka Imperial Gardens, Tokyo. This moth is bivoltine in Tokyo urban forests, adults fly in June-July and September. The outbreak of adult moths was observed in 2003 and 2004, but ended rapidly in the winter of 2004, when hibernating larval nests were mostly disappeared in the Imperial Palace. In 2005, the density level of adult moths backed to that in 2001-2001, a few or no moths were observed in each investigation of its flight periods. We had found and bread larvae of this polyphagous moth on the following 17 evergreen broadleaved trees in 11 families. Araliaceae: Fatsia japonica; Aquifoliaceae: Ilex pedunculosa; Caprifoliaceae: Viburnum odoratissimum var. awabuki; Eericaceae: Pieris japonica; Euphorbiaceae: Daphniphyllum himalaense; Fagaceae: Castanopsis sieboldii, Lithocarpus edulis; Lardizabalaceae: Extauntonia hexaphylla; Lauraceae: Cinnamomum camphora, Cinnamomum japonicum, Machilus thunbergii; Myricaceae: Myrica rubra; Oleaceae: Lingustrum japonicum; Theaceae: Camellia japonica, Camellia sasanqua, Camellia sinensis, Cleyera japonica. Most of lithosiine moths, Arctiidae, are lichen and algae feeders, and usually very common in any forests and grasslands. In the 1970-1980's, air pollution was very serious in Japan, and lithosiine moths, except for marshy moths of Pelosia spp., might have become once extinct in the Tokyo urban areas. From the 1990's onwards, air pollution was eased to some extent, and the flora of lichens and bryophytes began to restore in forests of city areas of Tokyo (Kashiwadani & Thor, 2000; Kashiwadani et al., 2001; Higuchi, 2001). In fact, some lithosiine moths were collected in the Institute for Nature Study, the Akasaka Imperial Gardens and the Tokiwamatsu Imperial Villa in 1998-2004, and they may already settle down in these forests. At the Imperial Palace, Tokyo, we were able to collect a female of Miltochrista abberans on 3 June, 2004, but we have collected none in 2005. It is quite likely that lithosiine moths will not settle down in the Imperial Palace grounds, which are the largest and richest the fauna and flora among large green tracts in urban Tokyo. This phenomenon may be one of the evidences of extinction of lithosiine moths in the urban Tokyo. There is a possible barrier, which obstructs the invasion of lithosiine moths to the Imperial Palace, that is, large moats completely surround the Palace. In larger moats, the longest width of water is ca. 100m, and is ca. 50m in smaller ones.
著者
有田 豊 佐藤 一喜
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.26-30, 1995-03-30

スカシバガ類の成虫の羽化(Fig.1)は天候の良いときには朝はやく,曇りや雨の日には昼間一日中行なわれること,また羽化が長期間にわたって行なわれることなどが知られている.著者の一人佐藤は名古屋市北区の神社の境内のシラカシQuercus myrsinaefoliaの1本の大木の幹から数10頭のコシアカスカシバSesia scribaiが発生しているのを見つけた(Figs 3-4).そこで1993年8月10日から9月30日までの間に,コシアカスカシバの羽化日とその日の天候,羽化場所,羽化時刻,羽化時の気温,照度,湿度などを朝7時から夕方4時まで毎日調査した.調査した1993年の夏(7-9月)は,例年と異なり気温が低く,雨の多い年であった.最初の羽化が見られたのは8月27日(♀)で,最後は9月25日(♀)で,30日間のあいだに20♂25♀の45頭であった.羽化場所(羽化口(Fig.2))は45個のうち,北に9個,北東に0,東に1個,南東に4個,南に1個,南西に8個で,西に6個,北西に16個で,北西に一番多かった(Figs 3-5).また多くの羽化口は幹の150cm以下の所にあった.羽化時刻は,記録の取れた38個体の内,午前中に25個体,午後に13個体が羽化した.また晴れの日は午前8-10時までの羽化が多く,曇りや雨の日は午前7時から午後3時までの昼間一日中羽化が見られた(Table 1).羽化時の気温は23.5°-26.5℃の間に多く見られ,26個体がこの範囲で羽化していた(Fig.6).羽化時の照度は大部分が5,000lux以下の明るさの時であった(Fig.7).また,羽化時の湿度は60-92%までとばらつきが大きく,羽化と湿度との関係は見られなかった(Fig.8).コシアカスカシバの羽化場所は食草の木の幹の北と北西の部分に多く,また幹の150cm以下の所にあった.これらのデータは,成虫の羽化は気温が上昇しはじめて23℃頃が刺激になって,羽化が始まることを伺わせる.
著者
Gorbunov Oleg G. 有田 豊
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.69-90, 1995-06-20
被引用文献数
6

スイス,ジュネーブの自然史博物館に保管されているスカシバガと著者たちのスカシバガ,さらにフランス,パリの自然史博物館のTinthia spilogastra Le Cerf,1916とSynanthedon duporti Le Cerf,1927のタイプ標本を調査した.本報では,1新属と7新種を記載し,2既知種(1新記録種を含む)を記録した.これでベトナムから22種類のスカシバガが記録されたことになる.Tinthiinae Le Cerf Tinthiini Le Cerf 1.Tinthia spilogastra Le Cerf,1916(Figs 1,17)ビルマ(ミャンマー)から記載された小さな種で,今回1♀をベトナムから新しく記録した.Similipepsini Spatenka,Lastuvka,Gorbunov,Tosevski&Arita 2.Similipepsis bicingulata sp.nov.(Figs 2,12a-d)日本産のコシボソスカシバに非常に良く似ている種で,1♂が知られているのみである.Sesiinae Boisduval Sesiini Boisduval Cyanosesia gen.nov.中型のスカシバガで,♂の触角の繊毛は非常に短く,前翅は細長い.♂ゲニタリアはEusphecia,Scasiba,Sesia属などと非常に異なる.Type species:Cyanosesia tonkinensis sp.nov.3.Cyanosesia tonkinensis sp.nov.(Figs 3,11,13a-e)Paranthrene zoneiventris Le Cerf,1916に良く似るが,後翅の中室紋やCu_1の位置などで区別できる.4.Cyanosesia vietnamica sp.nov.(Figs 4,18)前種に非常に良く似るが,腹部背面第4節と5,6節後縁が橙黄色なので区別される.Osminiini Duckworth&Eichlin 5.Aschistophleps xanthocrista sp.nov.(Figs 5,14a-c)後脚の長い特異な種で,同属のA.ruficrista(Rothschild),A.cruentata Swinhoe,A.haematochrodes Le Cerf,A.lampropoda Hampson,A.metachryseis Hampsonなどとは前後翅,腹部,後脚などの色彩で区別される.Synanthedonini Niculescu 6.Synanthedon aurifasciatum sp.nov.(Figs 6,19)腹部第4節背面に赤橙色の帯をもつ種で,1♂のみで記載した.7.Ichneumenoptera duporti(Le Cerf),comb.nov.(Figs 7-8,15a-e,20)この種はすでにLe Cerfによって1927年にベトナム,トンキンから記載されている.著者の一人(Gorbunov)は今回新たに日本産のホウロクイチゴに極めて良く似ているキイチゴ属の1種から本種の幼虫を見いだした.幼虫は食草の地上1m位の所に少し膨らんだゴールを形成し,3-5cmの短いトンネルを作っている.3月1日に採集した幼虫は4月15-21日の間に6♂12♀羽化した.8.Ichneumenoptera vietnamica sp.nov.(Figs 9,16a-e)この属の他のおおくの近似種に似るが,腹部の帯の色彩で区別される.9.Ichneumenoptera caudata sp.nov.(Figs 10,21)前種同様近似種がおおく,前翅前縁部,腹部の色彩で区別される.前種と共に食草や生態は不明である.
著者
Kellies Axel 有田 豊
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.187-235, 2001-06-30
参考文献数
43
被引用文献数
4

ここ10年くらいの間にベトナムの鱗翅目相がかなり解明されてきた.スカシバガ科も多数の昆虫研究者の協力によってかなりの資料が得られるようになった.著者らも1996年よりベトナムでの調査を開始し,1997年よりスカシバガ科の合成性フェロモンを使用することにより多数の種類と多くの個体を収集することができた.近年のベトナムのスカシバガ科の報告は,Romieuxによって1950年に採集され,主にスイスのジュネーブ博物館に保存されている資料によってなされている(Gorbunov,1988;Gorbunov&Arita,1995a,1995b,1995c,1996,1997).また,著者らの資料による報告もなされつつある(Arita&Gorbunov,2000a,2000b,2000c;Gorbunov&Arita,2000a;Arita&Kallies,2000).本報告では,スカシバガ科,ヒメスカシバガ亜科に所属する21種を報告した.ヒメスカシバガ亜科を調べた結果,他の鱗翅目と同様に,北ベトナムのファウナは北東インドや南中国と関係が深いことが明らかになった.すなわち,Trichocerota.dizona Hampson,1919,T.radians Hampson,1919およびT.proxima Le Cerf,1916などは北東インドから知られており,今回北ベトナムからも記録された.さらに,Caudicornia tonkinensis sp.nov.,Entrichella pogonias Bryk,1947およびTrichocerota melli sp.nov.などは南中国からも記録された.Subfamily Tinthiinae Le Cerf,1917 Tinthiini Le Cerf,1917 Ceratocorema Hampson,1893,gen.rev.=Neotinthia Hampson,1919,syn nov.C.hyalina sp.nov.(Figs 2,31,45)非常に小さいスカシバガでこの属の他の種類はインド,ミヤンマー,ラオス,マレーシアなどから知られている.C.yoshiyasui sp.nov.(Figs 3,46)前種同様に小さい種で北ベトナムのクックホンで得られた.Parathrenopsis Le Cerf,1911=Oligophlebiella Strand,1916,syn.nov.P.flaviventris sp.nov.(Figs 4,47)この属の種類は,東アジアと東南アジアから5種類が知られているのみである.Caudicornia Bryk,1947 C.xanthopimpla Bryk,1947(Figs 5,32)この種類は北部ミャンマーから知られていたが,今回北ベトナムの最高峰のファンシーパン山の近くのサパ(標高1,950mのところ)で合成性フェロモンによって採集された.C.tonkinensis sp.nov.(Figs 6,7,33,48)図示したように際だった性的二型の種類である.幼虫はキイチゴの一種の前年茎の基部近くに潜っているのが発見され,飼育の結果本種の雌が羽化した.雄は午後に合成性フェロモンに飛来した.本種は南中国からも発見された.Entrichella Bryk,1947 E.pogonias Bryk,1947(Figs 8,9,10,34)本種は,中国のE.leiaeformis(Walker,1865)や同じく中国のE.meilinensis(Xu&Liu,1993)や韓国のE.shakojianus(Matsumura,1931)などに酷似している.再調査が必要である.E.tricolor sp.nov.(Figs 11,12,34,49)この種は腹部第4と5節の橙黄色と白の帯によってこの属の他の種類と容易に区別される.南中国からも記録された.Trichocerota Hampson,1893 T.proxima Le Cerf,1916,comb.rev.(Figs 13,36)本種は腹部基半分が黒褐色で残りの半分が灰色がかった黄色の2色で,他の種類とは際だって異なる.北部ミャンマーから知られていたが,北部ベトナムからも記録された.T.radians Hampson,1919(Figs 14,15)本種も前翅の長い透明部分から他の種と容易に区別される.北東インドから知られていたが,北部ベトナムからも記録された.T.spilogastra(Le Cerf,1916),comb.rev.本種はすでに,Gorbunov&Arita(1995c)によってベトナムより記録された.T.melli sp.nov.(Figs 16,17,37,50)本種の前翅の青い輝きはこの属の種としては非常に特徴的である.中国南東部と北ベトナムから記録された.Paradoxecia Hampson,1919=Paranthrenina Bryk,1947,syn.nov.P.myrmekomorpha(Bryk,1947),comb.nov.(Figs 18,19,38)本種は腹部基半分が黒褐色で,外半分が灰黄色である.北部ミャンマーから知られていたが,今回北ベトナムからも発見された.P.vietnamica Gorbunov&Arita,1997本種は,Gorbunov&Arita(1997)によって記載された1雌が知られているのみである.P.luteocincta sp.nov.(Fig.20)本種は腹部の幅広い2本の帯が特徴的である.P.karubei sp.nov.(Figs 21,51)本種は腹部の幅広い橙黄色の帯が特徴的である.P.dizona(Hampson,1919),comb.nov.(Figs 22,23,39,52)本種は北東インドから知られていたが,今回北ベトナムから発見された.P.tristis sp.nov.(Figs 24,25,40,53)本種は腹部に帯が全く現われないことからこの属の他の種類から区別される.Rectala Bryk,1947 R.magnifica sp.nov.(Figs 26,27,41,54)本種は雌雄ともに腹部に幅広い黄色の帯が存在することにより他種と間違うことはない.Pennisetiini Naumann,1971 Corematosetia gen.nov.翅脈はヒメスカシバガ亜科のPennisetia属に似るが,雄の触角がPennisetia属ではbipectinate(両櫛歯状)であるのに対して本属では単毛である.また雄のゲニタリアではバルバが大変異なる.C.naumanni sp.nov.(Figs 28,42,43)北ベトナムのタムダオで1雄が得られているのみである.Similipepsini Spatenka et al.,1993 Similipepsis Le Cerf,1911=Vespaegeria Strand,1913 S.helicellus sp.nov.(Figs 29,30,44)本種は開張15mmと大変小さく,また腹部が強くくびれており,チビドロバチに非常によく擬態している.Milisipepsis Gorbunov&Arita,1995 M.bicingulata(Gorbunov&Arita,1995)本種は,Gorubunov&Arita(1995c)によって記載されたホロタイプのみが知られている.