著者
古田 吉史 田中 貴絵 甲斐 達男
出版者
西南女学院大学
雑誌
西南女学院大学紀要 = Bulletin of Seinan Jo Gakuin University (ISSN:13426354)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.145-151, 2017-03-01

米糠を自然発酵させて調製する糠床に、種々の野菜を漬け込んで造る糠漬けは日本の伝統的発酵食品の一つである。糠床の微生物叢に関する研究は多いものの、糠漬け野菜の微生物叢とその変化についてはほとんど報告されていない。本研究では、85 年以上経過した熟成糠床3種と新たに調製した糠床1種にナスとキュウリを漬け込み、それら野菜に付着する微生物叢の変化を調べた。まず糠床中の微生物叢を調べたところ、今回使用した4種の糠床間で乳酸菌数と酵母数、その割合に大きな違いが見られた。浸漬野菜(糠床に18 時間浸漬後、水洗いした野菜)に関しては、コントロール(水洗いした野菜)と比べて、何れの糠床に浸漬した場合でも、一般細菌数は著しく減少し、乳酸菌・酵母数は増大した。付着した乳酸菌・酵母数は全体的にキュウリと比べてナスの方が多く、また糠床自体の乳酸菌・酵母数が多いほど付着菌数も多いと思われた。糠床中の乳酸菌数を高く維持すること等により、糠漬け野菜のプロバイオティクスとしての利用が今後期待される。
著者
甲斐 達男
出版者
西南女学院大学
雑誌
西南女学院大学紀要 (ISSN:13426354)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.87-98, 2007

パンは発酵時間が長いほど柔らかく硬化速度も遅くて良いということが経験的に信じられてきた。これは発酵生産物である有機酸やアルコール類がパン骨格を適度に潤滑させるためと説明されている。またパンの硬化速度には、発酵時間だけでなく生地のミキシング方法も影響すると考えられている。っまり、緩やかに時間をかけて生地を捏ね上げて作ったパンは、高速ミキサーで一気に捏ね上げたものよりも硬化速度が遅い。しかしながら製パン法の違いによって適する基本配合は大きく異なり、さらに加工者の質目標や好みによって用いる原材料や使用量が異なる。従って一般に経験的に認識されている製パン方法とパンの硬化速度の関係は、発酵時間やミキシング方法の影響だけを純粋に反映しているわけではない。そこで本報では、生地発酵時間の長短とミキシング法の違いがどの程度パンの硬化速度に影響を与えるのかを検証した。ここではパンの硬化速度に影響を与える3つの因子(製パン配合、パンの比容積、パンの残糖)を考慮して実験を行った。その結果、発酵時間の最も長い中種法と最も短い短時間法との間には僅かな差しか見られなかった。通常のミキシング法と高速ミキシング法の差も僅かであった。この事実はパンの硬化特性は配合による影響が大きいことを示唆するものである。