著者
兵頭 政光 甲藤 洋一
出版者
特定非営利活動法人 日本気管食道科学会
雑誌
日本気管食道科学会会報 (ISSN:00290645)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.84-90, 2006 (Released:2006-04-24)
参考文献数
19

喉頭は発声·呼吸·嚥下など多彩で複雑な機能を担っている。これらの機能の微細な調節には喉頭内の固有知覚受容器からのフィードバック機構が必要である。本稿では,喉頭の運動制御に強く関わっている筋紡錘と知覚神経終末についてわれわれがこれまでに行ってきた形態学的研究の成果を提示し,運動調節機構における役割について考察する。 ヒト喉頭について組織学的検索を行うと,外側輪状披裂筋を除くすべての内喉頭筋で筋紡錘の存在が観察できた。内喉頭筋の筋紡錘は他の骨格筋と比較して少なく,径や錘内筋線維の数などの点で小型であった。透過型電子顕微鏡による観察では,錘内筋線維の表面に瘤状の知覚神経終末が分布し,その一部は筋形質内に侵入していた。これにより,知覚受容器として効率的に機能することが推測された。内喉頭筋線維に分布する知覚神経終末は自由終末,葉状終末,らせん終末,終末球など多様な形態のものが観察され,多機能な知覚受容器として機能していると考えられた。