著者
伊藤 泰郎 藤本 倫史 申 明姫
出版者
広島国際学院大学現代社会学部
雑誌
現代社会学 (ISSN:13453289)
巻号頁・発行日
no.10, pp.101-114, 2009

本稿では、広島東洋カープが二軍の本拠地を置く山口県の由宇町を事例として、プロスポーツを軸とした地域おこしの取り組みについて考察を試みた。関係者への聞き取り調査に加えて、2008年8月に由宇練習場の観客を対象とした大量調査を実施し、観客の構成や集客上の問題点、地域への波及効果に関して分析を行った。この調査データは、スポーツファンの研究においても基礎資料ともなるものである。商工会や観光協会を中心に結成された広島東洋カープ由宇協力会は、イベント開催などの取り組みを行っており、二軍チーム専門の応援団である広島東洋カープ由宇応援隊も様々な活動を行っている。これらは一定の成果を上げており、「由宇球場が好き」という回答は観客の7割近くを占める。しかし、由宇練習場の位置付けがあくまでも「練習場」であることから、観客のための設備は不十分な状態にあり、公共交通機関によるアクセスの悪さや駐車場不足などの問題も抱えている。また、現地での物販が制限されていることから、観客の需要が高いにも関わらず、直接的な経済効果はほとんど上がっていない。また、由宇町が当初期待していた既存の観光資源との相乗効果も生まれていない現状にあるが、調査結果ではPR 方法の工夫などによりこうした現状が変化する可能性があることも示された。In this paper, the author looks at a case of regional vitalization with a professional sport, withan example of the town of Yuu, Yamaguchi Prefecture, in which the farm of the professionalbaseball team is based.In addition to interviews with people involved, the author conducted a mass survey of audienceat the Yuu stadium in August 2008, to analyze the composition of the audience, problems inattracting audience and the ripple effects on the town.The approach has accomplished certain achievements; however, facilities for the audiencein the stadium ― a mere practice ground ― remain insufficient, and the access by publictransportation and parking space is limited. Also, because the sales of merchandise in the stadium are restricted, there are few direct economic effects in the town, despite demands fromthe audience.The synergetic effects with existing local tourism resources are yet to come ; however, theresults of the survey show the possibility that the circumstance may change with, for example,a twist of publicity.
著者
目黒 輝美 申 明姫
出版者
広島国際学院大学現代社会学部
雑誌
現代社会学 (ISSN:13453289)
巻号頁・発行日
no.11, pp.91-98, 2010

本論は、研究課題 「福祉学を学ぶ留学生による福祉研究会の設立と運営」のもとに、現代社会学研究科に入学した中国からの大学院生及び研究生による福祉の研究をめざした研究会の活動の成果を報告するものである。2007年度、大学院生一人と研究生一人により、本研究会を設立した。2008年度は、2007年度に研究生であった留学生が、大学院前期課程に入学し、新たに研究生二人を受け入れて、三人で研究会を継続した。二年間延べ四人の中国人留学生による研究会活動の報告である。活動内容は、日本語と中国語の対訳表の作成である。四人とも福祉に係る研究をするために、本学の大学院で学び、日本語の福祉関連の本を読む必要があった。日本語で示された専門用語を理解することと、自分たちが読んで理解した日本語を中国語に翻訳することにより、日本の福祉を学ぶ中国からの学生に寄与できるものを作ろうという試みである。日本語と中国語を対にした辞書的なものを作るということで意見が一致し、月に二回程度集まって、分担した訳語表を作成したものである。日本語の福祉関連用語を「あいうえお順」にならべて、その意味を表わす中国語を併記するというかたちで訳語表を作った。