著者
三宅 優一郎 高見澤 滋 好沢 克 畑田 智子 服部 健吾
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.1236-1239, 2018-10-20 (Released:2018-10-20)
参考文献数
13

症例は5歳女児.持続する不正性器出血を主訴に当科紹介受診となった.外陰部を含め,身体所見に異常を認めなかった.MRI検査にて膣内異物を同定し,全身麻酔下に膣内観察,摘出を行った.摘出異物は直径約18 mmのプラスチック製の玩具とビニール片であった.異物摘出後,小児用膀胱鏡を用いて膣内を観察すると膣内の炎症所見は高度で,子宮口は同定困難であった.性的虐待の可能性も考慮し児童相談所と相談したが,性的虐待の可能性は低いと判断されたため摘出後4日目に自宅退院となった.摘出1か月後に再度小児用膀胱鏡を用いて膣内観察を行った際,膣内ポリープを認めたため摘出した.ポリープは異物による慢性炎症が原因と考えられる肉芽組織であった.小児の難治性の帯下・不正性器出血は膣内異物を疑い速やかな膣内観察が必要であり,摘出後のフォローアップも重要と思われた.
著者
畑田 智子 大浜 用克 新開 真人 武 浩志 北河 徳彦 工藤 博典 望月 響子
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.6, pp.915-919, 2010-10-20 (Released:2017-01-01)
参考文献数
17
被引用文献数
1

【目的】食道閉鎖症根治術後の吻合部狭窄に胃食道逆流症(GERD)を合併した場合,狭窄が増悪するために,拡張術による拡張効果が乏しいと言われている.食道閉鎖症根治術後にみられたGERD合併例とGERD非合併例の吻合部狭窄に対する治療方針について検討した.【方法】1974年から2006年8月までに当院で治療し,術後の追跡が可能な113例の中で術後に吻合部狭窄を合併した31例を対象に,GERD合併群と非合併群の2群に分け,吻合部狭窄に対する治療成績を比較検討した.【結果】吻合部狭窄例31例の内,GERD合併例は14例であり,GERD非合併例は17例であった.GERD合併群の上下食道断端距離(gap)は26.7±13.5mmであり,GERD非合併群は15.0±9.3mmで両群間に有意差を認めた.吻合部狭窄とGERDの合併群では14例中6例に吻合時に食道環状筋切開術(Livaditis)が付加された.吻合部狭窄に対しては拡張術を,GERDには制酸剤投与を行った.その結果GERD非合併群では平均2.4回の拡張術で吻合部狭窄症の症状が改善したのに対し,GERD合併群では平均7.3回の拡張術を行っても狭窄の改善がみられなかった.11例に噴門形成術を行い,3例には狭窄部切除を行った.噴門形成術後は8例が速やかに改善,3例はブジーを追加して改善した.狭窄部を切除した内の2例は間もなく噴門形成術を追加施行し,他1例はGERD症状が軽快したので経過観察とし,そのまま改善した.【結語】GERDを合併した吻合部狭窄に対しては,制酸剤の投与と拡張術だけでは狭窄に改善がみられないため,早期に噴門形成術を行うべきである.