- 著者
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長根 篤子
畠山 寛彰
吉田 宏
丸茂 町子
三条 大助
- 出版者
- 東北大学
- 雑誌
- 東北大学歯学雑誌 (ISSN:02873915)
- 巻号頁・発行日
- vol.5, no.2, pp.125-131, 1986-12-01
顎顔面口腔領域における電撃痛・知覚麻痺・灼熱痛・穿刺痛・味覚異常・嚥下痛・痙攣など(以下知覚異常として記す)の訴えは, 日常の臨床において時折遭遇するものである。しかし, それらの病因は種々で診断が困難なことも少なくない。そこで, 今回, 我々は, 知覚異常の診断に関する基礎的データを得るために, 過去4年間に東北大学歯学部附属病院を受診した新来患者の中で上記の知覚異常を主訴とした患者111例につき, 主訴と病因との関連性を検討した。その結果, 111例中女性78例(70.3%)男性33例(29.7%)で, 電撃痛, 知覚麻痺各々32例(28.8%), 灼熱痛21例(18.9%), 以下穿刺痛, 味覚異常, 嚥下痛, 痙攣量の順であった。年齢別では50歳代が31例(27.9%), 60歳代が22例(19,8%), 40歳代が18例(16.2%)であり, 特に40〜60歳代の女性が54例(48.6%)であった。来院までの罹病期間は1年以上が47例で最も多く, 次いで1ヵ月以内が24例であった。部位別分類では味覚異常を除く各主訴とも複数の部位に症状が発現し, 全体では舌部, 頬部, 眼窩部, 口唇部に多発した。また111例中59例には心疾患, 胃腸病, 高血圧, 肝疾患, 貧血などの全身疾患が認められた。臨床診断は実に様々なものがあり, しかも不明の症例が21例(18.9%)あったことから, 器質的な異常のみならず心因的背景がある場合も考えられ, 診断の困難性が伺われた。