- 著者
-
畠山 義彦
- 出版者
- 日本野鳥の会 神奈川支部
- 雑誌
- BINOS (ISSN:13451227)
- 巻号頁・発行日
- vol.26, pp.41-51, 2019-12-01 (Released:2020-01-08)
- 参考文献数
- 13
巣箱内に赤外線カメラを設置した巣箱観察システムを用いて、シジュウカラの営巣時における行動を観察した。営巣期間は巣作り開始の3月16日から巣立ちの5月8日まで54日間であった。抱卵時間と雨量、湿度、日射量の間には相関関係が見られ、雨の日には抱卵時間が短かった。雨量が多い日は食料調達が困難であり、親鳥♀自身の採食時間の確保が必要なため、抱卵時間が短くなったと推測される。巣内育雛期間においては雨の日は雛への与食回数が減り、雨が雛の成長に影響を与えていることがわかった。また1日の与食回数は与食開始から5 日目までは増加傾向にあったがそれ以降は減少している。しかし雛の体長は増加していっている。これは親鳥が1回に運んでくる虫の大きさが最初は小さかったが、次第に大きい虫へと変わっていき、与食回数は少なくなっても食べ物の総量は増えていっているからと考えられる。 巣内育雛期間において雛の羽毛が一定レベル以上に達 して抱雛が必要ないと考えられる日でも夜間の抱雛が 観察された。これは当日雨が降り、濡れた親鳥から与 食を受けた雛も濡れ、雛の身体に付着した水滴の蒸発 により気化熱を奪われ、体温低下を招き雛が衰弱する 可能性があり、これを防ぐために抱雛が行われると推 測する。